2022 Fiscal Year Research-status Report
森林植生下で特異的に認められる黒ボク土表層土壌の非アロフェン質化プロセスの解明
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22K05371
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 孝行 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10551228)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 森林植生 / 樹幹流 / アロフェン質黒ボク土 / 非アロフェン質黒ボク土 / アルミニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
生物に有害なアルミニウム(Al)を交換態として保持する非アロフェン質黒ボク土は、農業・環境上の問題土壌であり、アロフェン質黒ボク土と区別される。しかし、アロフェン質黒ボク土が分布する森林植生下でも、表層土のみ分類上非アロフェン的特徴を示すものがしばしば認められる。このような表層土は、森林植生が強く関与すると推察されるが、これを調べた例は少ない。本研究では、強酸性の樹幹流が森林表層土壌の非アロフェン質化を促進するという仮説を立て、これを検証するための研究計画を立案した。本年度実施した内容と結果の概要は以下のとおりである。 1)アロフェン質黒ボク土が分布する森林(静岡県)内において、異なる2種の樹木を選定した。すなわち、針葉樹にはヒノキ、広葉樹にはケヤキを選定した。これらの樹幹流、林内雨等をおおよそ1ヶ月毎に1年間採取した。採取試料のpH、EC、イオン組成、有機態炭素濃度をモニタリングした。また、ヒノキ樹幹流中のフルボ酸様物質を季節毎に回収し、その特性を評価した。その結果、針葉樹(ヒノキ)樹幹流のpHは、林外雨ならびに広葉樹(ケヤキ)樹幹流よりも採水時期に関わらず1程度低い値(3.8~4.1)を示すことが明らかとなった。この要因には樹幹流中のフルボ酸様成分の関与が、NMRスペクトル分析等から示唆された。 2)ヒノキ、ケヤキ樹幹から0.2, 0.5, 1.0, 1.5, 2.0 mの地点で表層から深さ30cmまで5cm毎にコアサンプラーを用いて土壌試料を3方向で採取した。採取試料のpH、交換性Al含量を分析した。その結果、樹幹流のpHが低かったヒノキ土壌のpHは、樹幹近くおよび表層ほど低い値を示した。また土壌pHの低下に対応して、交換性Al含量も増加した。以上より、アロフェン質黒ボク土に分類される土壌でも、樹幹流が土壌pHの低下と交換性Al含量の増加を引き起こすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果より、針葉樹(ヒノキ)樹幹流が強い酸性を示すことを明らかにした。ヒノキ樹幹流は褐色味を帯びており、ヒノキ樹幹流の酸性には有機酸が関与すると考えられた。そこで、当初の実験計画に加えて、季節毎のヒノキ樹幹流のフルボ酸様成分を回収しており、現在その特性についても分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度採取したヒノキ、ケヤキの樹幹距離別土壌のAl形態分析を実施し、非アロフェン的特徴の指標である活性Alの形態を掌握する。これと並行して水溶性Alの含量および形態についても分析を進める。また、本年度の研究によって、針葉樹の樹幹流は広葉樹よりも酸性を示すことが明らかとなったため、今後は針葉樹の樹種をスギとして、本年度と同様の分析を行う。 なお、当初は申請書記載の埋設試験を行う予定であったが、研究期間内では明確な結論が出ないと考えられたことから、この実験を取りやめることとし、代わりにヒノキ樹幹距離別土壌の粘土鉱物について分析を行う。これにより、ヒノキ樹幹近傍土壌で認められた交換性Al量の増加がアロフェンの溶解に伴うものなのかを明らかにする。
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