2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05392
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西山 辰也 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (10759541)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機触媒 / 抗生物質 / 放線菌 / グラナチシン |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究では、有機触媒(触媒作用を有する金属非含有低分子化合物)の示す抗菌活性、細胞毒性の作用メカニズムの解明と、未だ一般に認識されるに至っていない抗菌活性を有する有機触媒が普遍的に存在することの実証を目的とする。すでに申請者らによってアクチノロージン(ACT)やグラナチシン(GRA)は生体内の重要な抗酸化物質であるグルタチオンを基質とする酸化反応触媒活性を有していることは判明しているものの、本来の基質は不明なままである。一方で、乳酸菌の細胞懸濁液にGRAを添加したところ酸化反応触媒活性を示す酸素濃度の減少が見られ、GRAは細胞に存在する物質を基質としている可能性が非常に高まった。そこで、GRAに焦点をあて、本来の基質やGRAの細胞内での挙動を明らかにすることで、これまでに全く知られてこなかった、生物が有する有機触媒が示す抗菌活性の作用機序を明らかにする。 【結果】静置培養で大量に乳酸菌の細胞を獲得し、超音波破砕を行った。その破砕液を遠心して、沈殿画分と可溶性画分とに分けた。それらとGRAと混合し、酸素濃度の減少を指標に細胞内に含まれる生体内での本来の基質の同定を実施した。その結果、可溶性画分において酸素濃度の減少が確認された。GRA感受性であるBacillus subtilisを用いてUV変異処理の条件検討並びに、変異株の獲得を行った。UVライトの照射時間を30秒ごとに設定し、最適照射時間を決定した。その後、培養液をUV処理し、複数の変異株の獲得に成功した。土壌分離株約500株から、高活性株を数株獲得した。また、最も高活性の菌株の培養上清から、目的物質を酢酸エチル抽出で獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、放線菌がアスコルビン酸やチオール化合物を酸化して過酸化水素を生成する反応を促進する低分子触媒を生産することを発見した。本研究では、その触媒活性がこれらの化合物の抗菌性の本体であることを実証する。予備的な知見から抗菌性を発揮する要因として(i)チオール化合物およびそれらを含む高分子の酸化による失活と(ii)過酸化水素による酸化障害の2つが予想される。そこで本研究では、①生体中で実際に酸化を受ける基質の同定、②耐性変異株の取得と変異点解析による耐性化のメカニズムに関する情報の収集、③類似の触媒活性を示す新しい抗生物質の探索と同定、を行う。 本年度は①基質探索手法を検討し、決定した。まず乳酸菌に適した培地の検討を行い、決定した。次に静置培養で大量に細胞を獲得し、超音波破砕を行った。その破砕液を用いてGRAと混合し、酸素濃度の減少を指標に基質の同定方法を確立した。②GRA感受性であるBacillus subtilisを用いてUV変異処理の条件検討並びに、変異株の獲得を行った。UVライトの照射時間を30秒ごとに設定し、最適照射時間を決定した。その後、培養液をUV処理し、複数の変異株の獲得に成功した。③土壌分離株約500株から、高活性株を数株獲得した。また、最も高活性の菌株の培養上清から、目的物質を酢酸エチル抽出で獲得した。 上記は当初の実験結果の予想通りであり、十分な結果が得られていると言え、このことから実験は計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「①生体中で実際に酸化を受ける基質の同定」では乳酸菌の細胞をより細かく分画し、それらの中から低分子触媒の基質の散策を行う。具合的には、まず細胞破砕液を密度勾配遠心法で分画する。その後、得られた画分を液体クロマトグラフィーに供し、目的物質の特定を行う。 「②耐性変異株の取得と変異点解析による耐性化のメカニズムに関する情報の収集」では、UV処理により得られた耐性株を用いて、まずは過酸化水素に対する感受性試験を実施する。過酸化水素に対する感受性が向上していない株については、考えうる機構とは別の機構がターゲットであることが示唆されるため、ゲノム解読を用いた手法で変異点を解析する。 「③類似の触媒活性を示す新しい抗生物質の探索と同定」では、得られた高活性菌の培養上清中の目的化合物を酢酸エチルで抽出し、それをHPLCなどで分画する。最終的には得られた化合物をNMRなどに供することで構造解析を行う。
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