2023 Fiscal Year Research-status Report
酸性条件下で耐熱性を示すGH19型キチナーゼの構造解析と抗真菌酵素製剤の開発
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22K05423
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
矢野 成和 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (50411228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞壁 幸樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (20508072)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キチナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
Lysobacter enzymogenes MK9-1由来のGH19キチナーゼChi19MKは、抗真菌活性を有し、酸性条件下で優れた熱安定性を示す。また、本酵素は、加熱変性後に冷却するとリフォールディングする。 2023年度は、昨年に明らかにした結晶構造の情報と既知微生物キチナーゼのアミノ酸配列情報をもとに、Chi19MKの安定性に寄与する配列を解析した。実際には、イオン結合を形成すると予測されるアミノ酸に部位特的変異を導入し、また、既知微生物キチナーゼと相同性を有さない領域について領域置換を行った。その結果、活性中心付近とは異なる領域に変異を導入することで、Chi19MKの熱安定性が失われることが明らかになった。熱安定性を有さないBacillus circulans KA-304由来GH19キチナーゼChi I に、Chi19MKの熱安定性のアミノ酸配列を導入することで、熱安定性に寄与する配列を解析している。 さらに、Chi19MKと協働して真菌細胞壁を溶解する酵素の探索も行った。Aspergillus oryzaeをモデル真菌とし、Chi19MKとL. enzymogenes MK9-1由来β-1,3-グルカナーゼBgluC16MKの抗真菌活性を増強させるα-1,3-グルカナーゼを探索した。その結果、Flavobacterium sp. EK-14由来α-1,3-グルカナーゼAgl-EK14と、Schizosaccharomyces pombe由来α-1,3-グルカナーゼAgn1pにα-1,3-グルカン結合ドメインを融合させた酵素Agn1p-DCDが、抗真菌活性を増強させた。 β-1,3-グルカナーゼについても様々な微生物からクローニングを行い、抗真菌活性を有する酵素を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、キチナーゼChi19MKに変導入を行い、熱安定性とリフォールディングに関わるアミノ酸配列の解析を行った。複数の変異体を作製し、熱安定性に関わる配列を解析できたのは、2022年度にChi19MKの結晶構造を明らかにできたことが大きな要因である。イオン結合を形成すると予測されるアミノ酸は、アミノ酸配列比較だけでは明らかにすることができなかったと考えられる。また、酵素の立体構造予測を活用することで、結晶構造が明らかにされていないキチナーゼと構造比較を行えたことで変異導入部位を決定できた。このように、立体構造解析と他の酵素との立体構造比較から、熱安定性に関わるアミノ酸配列の候補を比較的短期間で明らかにできた。 Chi19MKの抗真菌活性を増強させる酵素の探索も行った。特に優れた抗真菌活性を示したのが、Flavobacterium sp. EK-14由来α-1,3-グルカナーゼAgl-EK14である。本菌は、1975年に歯垢の形成に関わる口腔内連鎖球菌が生産するムタンを分解する微生物として報告されていたが、それ以降に研究が進んでいなかった。本研究では、データーベース解析を行い、本菌が生産するであろうα-1,3-グルカナーゼ遺伝子を特定し、大腸菌異種発現系により酵素を取得した。優れた菌株からクローニングすることで、2023年度中にChi19MKの抗真菌活性増強効果を明らかにできた。本成果をもとに、Flavobacterium属細菌が保有するβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子のクローニングも進めており、複数の酵素を得ることに成功している。 以上のように、結晶構造をもとに配列を解析できたこと、また、有用株から酵素を取得できたことから、2023年度に予定していたChi19MKの構造解析と変異酵素の作製、Chi19MKと相乗効果を示す多糖分解酵素の探索がおおむね順調に達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、Chi19MKの熱安定性とリフォールディングに関わるアミノ酸配列の解析を解析し、その候補となる配列を明らかにした。2024年度は、熱安定性を有さないB. circulans KA-304由来GH19キチナーゼChi I に、熱安定性とリフォールディングに関わるアミノ酸配列を導入し、必須な配列を解明する。また、Chi19MKの安定性や抗真菌活性の向上を目指し、Kozomeらがガジュマル由来GH19型酵素に導入した変異部位(Appl. Environ. Microbiol.,88, e0065222)を参考にして、Chi19MKに変異を導入する。また、多糖結合ドメインを付加することで、抗真菌活性の増強効果も調べる。 20224年度では、これまでに得た様々な多糖分解酵素とChi19MKの最適な配合を検討する。β-1,3-グルカナーゼについては、多数の候補酵素があるので、Flavobacterium sp. EK14由来α-1,3-グルカナーゼAgl-EK14とChi19MKの抗真菌活性を増強するものを選抜する。また、抗真菌剤との相乗効果を検討する予定であるが、β-グルカン合成阻害剤であるミカファンギン等を用いて検討する。 Chi19MKの安定性を高める添加剤についての検討は、キチンオリゴ糖、アセチル基を有する糖、グリセロール、ポリエチレングリコール、デンプンやセルロース化合物を用いて行う。また、Chi19MKの抗真菌活性を高める多糖分解酵素を配合した混合液についても、安定化剤を調べる。 これまでの検討で、Chi19MKの酸性条件下における熱安定性メカニズムの解析と、Chi19MKの構造解析と変異酵素の作製、については概ね順調に進展している。2024年度は、抗真菌酵素製剤化を目指した安定化剤と相乗効果を示す抗真菌剤や多糖分解酵素の探索に注力することで目標を達成する。
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Causes of Carryover |
研究申請時に2022年度の設備備品としてUV/Vis吸光光度計用のプログラム機能付恒温セルホルダーを計上したが、交付決定額から考えて購入しなかったために、次年度使用が生じている。2024年度は最終年度であるので、人工合成DNAの購入数を増やすことで研究の進捗を早めたいと考えている。また、論文投稿も積極的に行っていきたいので、投稿料等に予算を使用したいと考えている。
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Research Products
(5 results)