2022 Fiscal Year Research-status Report
マイナーイントロンスプライシングにおけるZRSR2のRNA認識機構の解明
Project/Area Number |
22K05424
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 尚史 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (90724774)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | スプライシング / マイナーイントロン / ZRSR2 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等生物のDNAは、タンパク質として翻訳される領域(エキソン)だけでなく翻訳されない領域(イントロン)を含んでいる。イントロンはRNA転写後にスプライシングにより取り除かれるが、その取り除きに関しては厳密な正確さが要求され、取り除く部位が1塩基でもずれると、病気の原因となる。特に、全イントロンのわずか0.3 %はマイナーイントロンとして重要な遺伝子のみに含まれており通常とは異なる機序でスプライシングされる。本研究対象のZRSR2タンパク質は、マイナーイントロンのスプライシング開始段階においてスプライシング部位を認識する働きをもち、その変異が血液がんの患者において高頻度に確認されることが報告されている。そこで本研究では、ZRSR2とスプライシング部位RNAについて立体構造解析や相互作用解析を行い、ZRSR2によるスプライシング部位の認識機構およびZRSR2変異体による病気発症機構を明らかにする。 本研究では、RNA認識機構の解明に向けた原子分解能レベルでの構造解析を目的とするため、X線結晶構造解析を行う予定である。タンパク質を結晶化させるには、高純度かつ均一な試料が大量に必要とされるため、2022年度では主にタンパク質試料の大量調製について探索を行ってきた。当初、ZRSR2の収量は低く安定性も悪いという問題があったが、共発現系の構築や発現条件を検討することで、高純度なZRSR2のタンパク質試料を大量に調製することができた。今後、この試料を用いて結晶化スクリーニングを実施していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ZRSR2タンパク質の試料調製を中心に実験を進めてきた。ZRSR2は、単体として発現させると収量が少なく不安定であったが、共発現系を構築しタンパク質複合体として精製することで、安定化されることがわかった。さらに、ZRSR2の発現条件を検討することで、その複合体が解離しやすいという問題も解決することができた。また、等温滴定型カロリーメータ(ITC)を用いてRNAとの相互作用解析を実施した結果、調製したタンパク質試料がRNA結合能を有していることも確認された。以上のことから、タンパク質試料の大量発現系および精製方法を確立することができ、mgオーダーでの試料調製に成功したため、今後実施予定の結晶化スクリーニングや相互作用解析を順調に進めていくことができると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ZRSR2のRNA認識機構の解明に向けて、X線結晶構造解析と相互作用解析を進めていく。構造解析においては、まずRNA非結合型として結晶化条件の探索を行っていく予定である。結晶が得られた際は、X線照射実験や回折データの収集、構造解析を進めていく。解析した立体構造については、これまでに明らかにされている亜鉛結合モチーフとRNAの複合体構造と比較を行い、RNA結合部位を同定する。 また、構造解析と並行して相互作用解析によって、ZRSR2が特異的に結合するRNA配列を探索する。様々なRNA配列についてZRSR2との相互作用を調べ、最も強く結合するRNA配列を特定する。得られたRNA配列については、ZRSR2との共結晶化を実施し、RNA複合体の立体構造解析を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究計画時においては、バキュロウイルス昆虫細胞の発現系を用いたタンパク質試料の調製も候補として想定していたが、大腸菌による発現系を用いることで十分量のタンパク質試料を得ることができた。そのため、昆虫細胞発現系を用いず、比較的安価な大腸菌発現系のみで研究を進めることができた。また、相互作用解析やX線結晶構造解析において必要となるRNAや結晶化試薬については、別の研究で使用した合成RNAや試薬を代替品として実験を行った。以上の理由から、物品費の支出が当初の予定よりも少なくなった。
|