2023 Fiscal Year Research-status Report
代謝工学に輸送工学と共培養を組み合わせた効率的な有用代謝産物生産系の開発
Project/Area Number |
22K05433
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
士反 伸和 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (20547880)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 代謝工学 / 輸送工学 / 共培養 / アルカロイド / 物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が生産する特化代謝産物は多彩な生物活性を有し、医薬品原料などに用いられている。希少な有用化合物の安定供給を目指し、代謝工学が進展し微生物生産も可能となったが、生産性が低いなどの課題もある。本研究では、これまでに確立してきた輸送工学と共培養系を代謝工学と融合した複合微生物培養系を構築し、有用代謝産物の高生産と新奇な有用代謝産物の迅速な創出を行うことを目指している。 本年度は、昨年度に続いて大腸菌とピキア酵母の共培養生産系の改良の検討を進めた。大腸菌の前培養やメタノール添加などの検討を進めた結果、これまでの系に比べて最終的に80倍以上の生産性の向上に成功した。本研究成果はBiological Pharmaceutical Bulletinに報告することができた(Urui et al., 2023 BPB)。 また、ピキアの輸送工学として、レチクリンからスチロピンを生産するピキア酵母に複数の輸送体を導入した。メタノール誘導後のピキア酵母において、それら輸送体の発現をウェスタンブロット解析により確認した。また、一部の輸送体については、スチロピン生産性が向上していることを見出している。これら解析から、輸送工学の実用性や、どのような輸送体のどの程度の発現レベルが適切かなどの情報を得てきている。 さらに、これら共培養系と輸送工学について、我々のデータも含めた最新知見をまとめた総説を執筆し、Plant Biotechnology誌に採択された(Yamada et al., Plant Biotechnol. accepted)。最終年度は、さらに輸送工学の知見を得ていき、今後の応用に繋げていくことを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共培養系の成果を論文化できたとともに、ピキア酵母においても複数の輸送体について形質転換体を作出、さらに生産性の向上を一部の輸送体で得られているなど、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
作出した輸送体発現ピキア酵母について、スチロピン生産性の評価を行う。レチクリン添加時のピキア酵母のスチロピン生産性を検討することで、大腸菌からのレチクリン供給量が異なる可能性を排除する。そのため、大腸菌からのレチクリンの単離も並行して行う。輸送体の種類、輸送体の発現量などと生産性を検討することで、スチロピン生産においてどのような輸送体が適しているかを明らかにし、ピキア酵母における輸送工学に関する重要な知見を得る。これまでの知見も含めて、代謝工学と輸送工学と共培養を組み合わせた、適切な生産系の開発につなげることを目指す。
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Causes of Carryover |
微生物を用いた実験系が、想定以上にうまく進みました。さらに、論文化においても、追加実験が少なかったため、試薬などの消費がかなり抑えられ、結果として次年度使用額が生じました。一方で、次年度、輸送体を発現するピキア酵母の選抜がほぼ終わってきているため、輸送工学の実用性を検討するための実験に用いる試薬などの購入に用い、研究をさらに進めていく予定です。
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Research Products
(4 results)