2022 Fiscal Year Research-status Report
病原性微生物由来のガスセンサータンパク質の構造と機能に関する研究と創薬への応用
Project/Area Number |
22K05446
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
北西 健一 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (90815482)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ヘム / グロビン / ガスセンサー / 病原菌 / c-di-GMP / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性微生物由来ガスセンサータンパク質(GCS-HD-GYP)の構造と機能に関する研究、さらには創薬への応用を目指し研究を行っている。GCS-HD-GYPはN末端にグロビンドメイン、C末端にc-di-GMP分解酵素(フォスフォジエステラーゼ)活性を持つHD-GYPドメインを持っている。c-di-GMPは近年、微生物の生理活性において重要なセカンドメッセンジャーであることが明らかになってきている。ゲルろ過解析の結果、精製タンパク質はホモ二量体で、 CDスペクトルからヘリックスの多い構造であることがわかった。ミオグロビンやヘモグロビンのようなグロビンタンパク質に特徴的な吸収スペクトルを示し、酸素、一酸化炭素、一酸化窒素などのガス分子が結合することがわかった。HD-GYPドメインは、酵素活性に2価金属イオンを必要とすることから、様々な金属イオン存在下でc-di-GMP分解活性を評価したところ、Mn存在下で活性を示すことがわかった。c-di-GMP分解活性は酸素の結合によって活性化されるのに対して、一酸化窒素の結合によっては不活性化されることがわかった。この結果は他のグロビンセンサーとは異なる興味深い特徴である。また、ガスセンシングに重要なグロビンドメインの結晶化に成功し、3 A程度の分解能の回折データを得た。分子置換法によって、構造解析を行ったところ、ヘム周辺の電子密度が不明瞭であった。より高分解能データの収集を目指し、現在結晶化条件の最適化を行っている。また、結晶化の再現性がよくないので、並行して結晶化スクリーニングも行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り研究は進展している。初年度に得られた結果を学術論文投稿を目指してまとめている。GCS-HD-GYPのグロビンドメインの結晶化に成功している。また、病原菌由来GCS-HD-GYPと相同性のある好熱菌由来タンパク質の結晶化も進めている。また、本研究対象とは別のヘムエリスリンをセンサードメインとして持つセンサータンパク質についても、総説としてまとめることができた(Front. Mol. Biosci. 9, 967059 (2022) )。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は病原性微生物由来ガスセンサータンパク質GCS-HD-GYPの構造解明を目的とし、全長タンパク質、およびグロビンドメインの結晶化を集中的に進めていく。また、病原菌由来タンパク質と相同性があり、より安定性の高い好熱菌由来タンパク質についても結晶化を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初購入予定だった結晶化スクリーニングキットを次年度購入することにした。
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