2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05451
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 早人 名古屋大学, 学際統合物質科学研究機構, 特任助教 (70778258)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 休眠 / ケミカルバイオロジー / カイコ |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の繁栄を支える環境適応応答の分子基盤の解明は、地球温暖化による生態系、生物多様性、農業生産への悪影響を克服する突破口となるため、喫緊の課題の1つとして位置付けられる。昆虫の環境適応応答は休眠と呼ばれ、胚期で休眠するカイコの休眠制御機構の研究が先行している。カイコでは休眠ホルモンを基点とするシグナル伝達によって休眠が実行されることが知られているが、その詳細は未だ明らかでない。 カイコ休眠制御機構を解明するため、われわれは休眠ホルモンシグナルの下流に存在する休眠誘導シグナルに焦点を当て、そのシグナル制御因子を作用標的とする化合物 (カイコ休眠制御分子) の探索を進めた。はじめに、酵素断片法NanoBiTシステムの条件検討を行い、カイコ休眠制御分子を効率的に探索するin vitroスクリーニング系を確立した。名大ITbMが保有する化合物ライブラリおよび申請者所属の伊丹研究室が保有する化合物ライブラリから選抜された約2,000化合物をこのスクリーニングに適用した結果、休眠制御分子候補となる6種類の化合物を見出した。続いて、これらの化合物のうち最も活性の高かった1種類の化合物と、これまでに我々が休眠制御分子候補として見出していたシアニジンを用いたin vivoアッセイを実施した。しかしながら、いずれの化合物投与においてもカイコ卵に対する休眠制御効果は認められず、in vivoアッセイ系の再検討もしくは化合物の活性向上が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究計画としては、カイコ休眠制御分子のin vitroスクリーニングを実施し、ヒット化合物を見出すことを目標としていた。研究計画申請の段階において、酵素断片法NanoBiTシステムを活用したin vitroスクリーニング系を既に構築していたため、速やかにスクリーニングに取り組んだ。スクリーニングにおいては、はじめに名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (名大ITbM) が所有する化合物ライブラリを用いた。分子構造の多様性を重視して選抜された化合物ライブラリ (1593化合物) による1次スクリーニングの結果、9種類のヒット化合物を得た。続いて、これらのヒット化合物の構造に基づく類縁体を選抜したチェリーピックライブラリ (91化合物) による2次スクリーニングの結果、前述したヒット化合物よりもさらに活性の高い4種類のヒット化合物を得た。また、申請者が所属する伊丹研究室に独自のナノカーボンライブラリ (246化合物) およびLawrence T. Scott教授から移管されたナノカーボンライブラリ (251化合物) をスクリーニングに適用した結果、2種類のヒット化合物を得た。これにより、合わせて6種類のカイコ休眠制御分子候補を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroスクリーニングによって見出されたカイコ休眠制御分子候補について、in vivo活性評価を実施する。令和4年度においてはin vitroスクリーニングに加えて、in vivo活性評価のための予備実験も実施した。予備実験ではin vitroスクリーニングで最も活性の高かった1種類の化合物と、これまでに我々がカイコ休眠制御分子候補として見出していたシアニジンを用いた。具体的には、大門らが報告したDIPA-CRISPR (Cell Rep. Methods, 2022, 16:100215) を参考にカイコ蛹への化合物投与を実施し、次世代卵の休眠性を制御できるかどうかを評価した。しかしながら、いずれの化合物投与においてもカイコ卵に対する休眠制御効果は認めらなかった。今後の研究の推進方策としては、化合物投与の時期・量の条件検討を行う。またカイコ蛹ではなく、産卵直後のカイコ卵への化合物投与を実施し、休眠卵もしくは非休眠卵に対する休眠制御効果を検証する。in vivo活性評価と並行して、カイコ休眠制御分子候補を活用したケミカルゲノミクスを実施し、カイコ休眠誘導シグナルの下流因子の同定と機能解析を進める。
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Causes of Carryover |
消耗品や試薬の購入が当初の予定よりも少なくなったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額をin vivoアッセイのための消耗品や試薬の購入に使用する予定である。
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