2022 Fiscal Year Research-status Report
マメ科の共通物質coumestrolの生合成と生態機能の解析
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22K05457
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
明石 智義 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80328707)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マメ科植物 / ファイトアレキシン / フラボノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
Coumestrolは多くのマメ科植物が蓄積する「共通物質」であり,イソフラボノイドの一種である.この化合物は細胞内では核に存在し,しかもエストロゲンと構造が類似している.このためcoumestrolは,マメ科植物内でシグナル伝達など重要な役割を果たしている可能性が示唆された. しかしこれまでのところ,生態生理における役割は明らかではない. 本研究ではcoumestrolの生合成機構と関与する酵素遺伝子を明らかにし,遺伝子からのアプローチによりマメ科植物におけるcoumestrolの役割を明らかにする. これまでの研究で,isoflav-3-eneからcoumestrolがつくられることをダイズの粗酵素液を用いた酵素アッセイで明らかにしている.しかしisoflav-3-eneは市販されておらず,また不安定な化合物である.このため植物の遺伝子を組み込んだ組換え大腸菌を用いて簡便で効率的な調製法を確立した.各種阻害剤を用いた植物の粗酵素液と基質を用いた酵素アッセイにより,coumestrol生合成の最後のステップには酸化酵素が関与していることが明らかになった. ダイズ,カンゾウ,ミヤコグサなどのRNA-シーケンス解析を行い,酸化酵素の候補遺伝子を数種選抜した.植物から候補cDNAのクローニングを行った.大腸菌・酵母などで発現させ,組換え酵素タンパク質を用いて機能解析を行うために発現ベクターを作成した.cDNAクロ-ニングができなったものは,人工合成遺伝子を用いて発現ベクターの作成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は酵素アッセイのための基質の調製がネックとなっていたが,簡便に調製する系を確立できた.また酵素アッセイにより,酸化酵素であることが特定でき,研究は想定よりもスムーズに進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
候補タンパク質には,N末端にシグナル配列が付加していると予想される.大腸菌や酵母で発現出来ないときは,ベンサミアナタバコなど植物での発現を検討する.酵素遺伝子が同定出来た場合は,組換え酵素を用いた生化学的解析で基質特異性や反応速度などの酵素学的性質を明らかにする.またスケールアップした酵素アッセイを行い,生成物を回収・精製し,NMR等を用いて生成物の構造を解析する.またゲノム編集・RNAiなどにより遺伝子発現を抑制した組換え植物の作成を試みる予定である.ミヤコグサではLORE1変異体の入手を予定している.
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