2023 Fiscal Year Research-status Report
Structural determination of new nitrogenous labdane-type diterpenes from ginger extract and elucidation of their biosynthetic mechanism
Project/Area Number |
22K05473
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤田 智之 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10238579)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Zingiberaceae / ラブダン型ジテルペン / 糖化様反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究対象としたショウガ(Zingiber officinale)は代表的な香辛料の一つであり、和食には欠かせない食材である。これまでにショウガ抽出物のメタボローム解析により、複数の窒素を含む化合物の存在が示唆されていた。本研究では糖尿病予防に有効とされてきたショウガに着目し、ラブダン型ジテルペンのアミノ基捕捉活性の視点から終末糖化産物(AGEs)の産生抑制効果を検証し、糖尿病の予防・改善方法を提案することを目的とした。 高知県産大生姜のエタノール抽出物を分配抽出後、得られた酢酸エチル層を各種クロマトグラフィーにより分画した。目的成分を含む画分の精製を進め、新たに2種の新規化合物を単離し、各種機器分析によりそれらの平面構造を決定した。いずれも前年度構造解析した化合物の類縁体であり、ラブダン型ジテルペン骨格とピロール環を有し、アルギニン側鎖またはアスパラギン側鎖が結合した化合物であった。得られた化合物の化学構造の特徴から、ショウガに含まれるミョウガジアール(= アフラモジアール)とアミノ酸との糖化様反応生成物であることが強く示唆された。 愛知県産金時生姜の乾燥根茎から新たに単離したミョウガジアールとアルギニンとの反応を検討したところ、複数の生成物とともに大生姜から単離した新規ラブダン型ジテルペン化合物の生成を確認した。この生成物を単離し、構造解析した結果、各種機器分析データおよび旋光度の値がよく一致した。以上の結果から、立体構造が未定であったこの化合物の化学構造を決定することができた。今後はさらにミョウガジアールとアミノ酸との反応を検討し、これら化合物の生成機構を明らかにしてAGEsの産生抑制効果を検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ショウガを研究材料として、新規ラブダン型ジテルペンのアミノ基捕捉活性の視点から終末糖化産物の産生抑制効果を検証することとした。前年度調製した高知県産大生姜のエタノール抽出物を分離して得られた画分のうち、目的成分を含む画分をLC/MSの窒素含有新規化合物と予想される分子イオンピークを指標として精製を進めた。その結果、新たに2種の化合物を単離した。いずれも前年度構造解析した化合物の類縁体であり、1つはラブダン型ジテルペン骨格とピロール環、アルギニン側鎖を有していた。一方、もう1つの化合物はアルギニン側鎖の代わりにアスパラギン側鎖を有する化合物であった。得られた化合物の構造から、ラブダン型ジテルペンであるミョウガジアールとアミノ酸との糖化様反応生成物であることが強く示唆された。同じショウガ科のミョウガのエタノール抽出物を調製し、LC/MS分析におけるm/z 457及び475の分子イオンピークを検索したところ、同じリテンションタイムを示す成分の存在が確認できたものの、成分の単離には至らなかった。 そこで新たに、ミョウガジアールを高含有すると報告のあった金時生姜(愛知県産)を材料として、その乾燥根茎からミョウガジアールの単離を試みた。複数回のクロマトグラフィーと再結晶により精製し、ミョウガジアールを単離した。得られたミョウガジアールとL-アルギニンをエタノール/水中で反応させたところ、複数の生成物とともに最初に単離したラブダン型ジテルペン化合物の生成を確認した。生成物の単離、構造解析を進め、5種の生成物を単離した。このうちの1つの化合物が各種機器分析データおよび旋光度の値が最初に単離した化合物のそれらとよく一致したことから、この化合物の化学構造を立体化学も含めて決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに高知県産大生姜から6種の窒素含有ラブダン型ジテルペン化合物を単離し、それらの構造を決定または推定した。また、同じ抽出物の別の画分にアミノ酸部分の異なる関連化合物の存在が確認できていることから、これらの化合物についても単離を進める予定である。さらに、同じショウガ科のミョウガのエタノール抽出物を調製し、LC/MS分析におけるm/z 457及び475の分子イオンピークを指標に分離を進めたが、含有量が微量であったため成分の単離を断念した。一方、金時生姜の乾燥根茎のエタノール抽出物にも関連化合物の存在が示唆されたことから、金時生姜のエタノール抽出物からの単離を進める予定である。 金時生姜に含まれるミョウガジアールが高含量であったことから、原料確保の観点から新たに乾燥根茎のエタノール抽出物を調製し、前年度の精製法を参考に、各種クロマトグラフィーと再結晶法でミョウガジアールを単離する。得られたミョウガジアールとL-アルギニンとを水を溶媒として反応させ、生成物を確認する。エタノール/水中での反応では複数の生成物とともにエタノール付加体が得られていることから、生成物の違いを明らかにする。また、反応条件(pH, 温度及び時間)を変えて反応性を比較し、生成物を単離して、構造解析を行う。さらに、ミョウガジアールと各種アミノ酸との反応を検討し、ラブダン型ジテルペン類の生成機構を明らかにしてAGEsの産生抑制効果を検証していく予定である。
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