2023 Fiscal Year Research-status Report
The study on the physiological role of the increase in hepatic insulin receptor substrate-2 under protein deprivation
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22K05488
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
豊島 由香 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70516070)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | インスリン / インスリン受容体基質 / 肝臓 / 中性脂肪 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質の摂取不足によって増加する肝IRS-2が肝脂質蓄積に果たす役割の解明を目指す。本年度は、以下の2点について検討を行った。 1)前年度までの研究結果から、タンパク質の摂取不足と関係なく、IRS-2自身が肝臓の脂質代謝を調節している可能性が考えられた。そこで、標準食を給餌した野生型 (WT)とIRS-2欠損(KO)ラットの肝臓における中性脂肪量と脂質代謝調節因子のタンパク質量を測定して、IRS-2欠損が脂質代謝に与える影響を調べた。その結果、WTラットと比べてKOラットの肝臓で中性脂肪量は少なかった。また、WTラットと比べてKOラットの肝臓で脂質合成に関わる脂肪酸合成酵素(FAS)とアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)1のタンパク質量は少なく、脂肪酸分解に関わるカルニチンパルミトイル基転移酵素1A(CPT1A)のタンパク質量は多かった。 2)IRS-2欠損の実験と対照的に、IRS-2を強制的に増加させた際に脂質合成・分解に関わる因子がどのように変化するか、IRS-2を強制発現させた293T細胞を用いて調べた。その結果、コントロールの293T細胞に比べてIRS-2を強制発現させた293T細胞でFASとACC1の量が多く、CPT1A量が少ない傾向であった。 以上の結果から、タンパク質の摂取不足と関係なく、IRS-2がFAS、ACC1およびCPT1A量を調節することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに実験は進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、遺伝子導入の簡便さ故に、腎臓由来の細胞である293T細胞を用いてIRS-2強制発現が脂質代謝調節因子の量に与える影響を調べたが、次年度は肝臓の細胞を用いて検討する。IRS-2発現アデノウイルスをWTラットの肝臓もしくはその肝臓から調整した初代培養肝細胞に感染させて、IRS-2を強制発現させた際の肝臓もしくは肝細胞中の中性脂肪量を測定する。これによって、タンパク質の摂取不足と関係なく、肝IRS-2過剰発現によって肝臓脂質蓄積が誘導されるかを明らかにする。 また、これまでの研究成果から、タンパク質摂取不足による肝脂質蓄積にIRS-2を介した代謝調節が必要であることは明らかにできているが、肝臓におけるIRS-2を介した代謝調節が肝脂質蓄積に必要なのか、肝臓以外の臓器におけるIRS-2を介した代謝調節が必要なのかは未解明のままである。過剰発現の実験が順調に進行し、実験に必要な頭数のKOラットを用意することができれば、IRS-2発現アデノウイルスの感染によって肝臓でIRS-2を再発現させたKOラットに低タンパク質食を摂取させた際の肝中性脂肪量を測定する。これによって、WTラットと比べてKOラットで抑えられていた低タンパク質食によって誘導される肝脂質蓄積が、肝IRS-2再発現によって野生型ラットと同程度まで回復するかを調べ、低タンパク質食摂取によって起こる肝脂質蓄積に肝臓におけるIRS-2を介した代謝調節が必要なのかを明確にする。
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