2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K05496
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
金田 勇 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (30458129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 右副 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 専任研究員 (40312235)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | NMR / チーズ / カゼインミセル / レオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度は凝乳反応中のサンプルを遠心分離することでカゼインミセルおよび乳脂肪球の凝集物とホエイを完全に分離することで凝乳反応開始のタイミングを明確に決定する方法でデータを蓄積し、学会等でその成果を発信してきた。学会での議論の中では遠心分離操作を加えることなく凝集状況を検出できれば理想的であるとの指摘をうけ、さらに測定条件の検討を重ねた。 生乳に凝乳酵素を添加した直後にサンプルをNMR管に充填し、一定時間ごとにサンプルが入ったNMR管をよく振蕩攪拌してT2緩和時間を測定し、そのデータを注意深く解析すると、別途行ったレオロジー測定により観察された「ゲル化時間」と一致した点でT2緩和時間の変化を見出すことができた。これにより遠心分離操作なしで凝乳開始点を特定することに成功した。この新たな手法を用いて凝乳挙動がことなる系での測定も行った。一つは伝統的な凝乳剤であるレンネットではなく植物性プロテアーゼを含むキウイフルーツ果汁による凝乳反応である。このプロテアーゼはレンネットとことなり基質非特異性であるためにカゼインミセルの不安定化の反応速度がレンネットに比べて速く、凝乳速度も速いことが確認できた。また原料乳を高圧ホモジナイズ処理することによりチーズの物性が変化することを我々はこの数年研究してきたが、ホモジナイズ処理によっても凝乳速度が変化することも確認された。 一方でカゼインミセルの凝集挙動を直接観察するために放射光利用基盤センター(Spring8)の一般課題に応募し、x線極小角散乱(USAXS)測定を行い、レオロジー、NMRによるT2緩和時間およびUSAXSによる粒子(カゼインミセル)半径変化が矛盾なく説明できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では第一段階(R4-5)として単純系を用いで凝乳挙動をT2緩和時間により再現性良く可視化する測定手順を確立することを目的とした。R5年度は大きな進展があり、より簡便なプロトコールで凝乳反応中のT2緩和時間の変化を検出することが可能になり、この手法の社会実装の可能性が高まった。また懸案であったカゼインミセルの凝集挙動の直接観察もSPring8の一般課題採択により実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は最終年度に入るためにこれまで得られた研究成果の発信を行う。 小型NMR装置を利用した簡便な初期凝乳挙動の観察技術という内容で国内外の食品科学関連の学会で成果発表を行う。また論文化を進める。 一方でこの2年間の研究から小型NMRによるT2緩和時間の評価は食品に多く見られるコロイド分散系の分散状態に関する知見を多く得ることができることを実験を通して実感した。R6年度は本研究課題を発展させた研究課題構築のための予備的研究にも注力したい。
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Causes of Carryover |
研究分担者が予定していた旅費(和光市ー札幌出張費)を消費しきれなかったために次年度に繰り越した。
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