2022 Fiscal Year Research-status Report
セレウス菌芽胞の圧力ストレス応答における不活性化誘起因子の分子論的・形態学的解析
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22K05502
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
前野 覚大 関西医科大学, 医学部, 助教 (70570951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金折 賢二 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (30273543)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セレウス菌芽胞 / 高圧力殺菌 / 芽胞不活性化 / 高圧NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「病原性菌芽胞の発芽を強く阻害する物理的あるいは生化学的因子を特定し、究極的にはあらゆる菌種に適用可能な万能型芽胞不活性化法を確立する」ことを目指し進められている。まず1年目は、病原性セレウス菌の成熟芽胞を対象とした「物理的ストレス応答におけるリアルタイムでの生化学的・構造的変化の可視化を目的として、病原性菌芽胞が不活性化する過程で生じる変化をミクロな視点で調べた。その結果、主に以下の成果を得た。 【圧力ストレスに伴い生じる芽胞漏出成分の検出】: これまでの研究で確立した、高圧NMR法を用いた細菌芽胞懸濁液の圧力ストレス応答観測法を応用し、病原性芽胞における同様のストレス応答を検証した。その中で、セレウス菌芽胞への圧力効果として、納豆菌芽胞を用いたモデル系で観測された内在性成分DPAの漏出が同様に認められた。しかし、その応答性は異なっており、セレウス菌芽胞からの漏出が見られる圧力下限は500気圧とモデル系の300気圧を上回っていた。また、2000気圧環境下に置くと、モデル系ではおよそ24時間かけてゆっくりと芽胞内部よりDPAが染み出てきたのに対して、セレウス菌芽胞では2時間ほどで漏出が完了した。加えて、常圧への脱圧後の応答では、モデル系とセレウス菌芽胞でともに同様のNMR信号変化(線幅の縮小)が認められたが、芽胞のストレス耐性にも関係していると考えられているDPAとCa2+との結合を示唆する低磁場方向への化学シフト変化量が両者では明らかに異なっていた。これら高圧NMR測定から得られたデータが、細菌芽胞の構造的な違いを反映しているのか、あるいは代謝やストレス耐性機構などの生化学的な違いを反映しているのかは現段階では不明であるが、今後はバイオイメージング法による芽胞構造損傷度の評価を交えながら検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り1年目に高圧顕微鏡セルシステムを新規購入したが、想定したよりも納品が遅れたため、開始時期も少し遅れた。しかし、物理ストレス(圧力/ 熱)を印加しながら高圧蛍光顕微鏡と蛍光試薬によるライブイメージングを行うための機器の設置および測定条件の最適化は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、引き続き高圧NMR法による圧力ストレスおよび熱ストレス応答に伴う成分変化の検証を行う。また、計画書の予定通り、芽胞漏出過程の分子動態を評価するためのプローブ分子の同定に着手する。ここでは、高圧NMR測定において特徴的な動態を示す漏出主成分が認められた場合に、web上で公開されている低分子化合物解析やメタボローム解析に特化したNMRデータベースを利用し信号帰属(=成分同定)を行っていく。また、バイオイメージング法による芽胞構造損傷度の評価も順次進めていき、芽胞内膜構造の損傷が物理刺激後のどの時点で発生するか、特にバルク水侵入との連動性を重点的に検証していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた海外出張を中止したため。繰越した助成金は今年度における物品費および旅費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)