2022 Fiscal Year Research-status Report
Molecular insights into food physical property revealed by quantum beam structural analysis in conjunction with rheology measurements
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22K05511
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 信浩 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10303918)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 食品タンパク質 / 小麦タンパク質 / グルテン / 重水素化 / 中性子小角散乱 / コントラスト変調 / 動的粘弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は小麦や大豆などの植物性食品タンパク質を対象に、量子ビーム小角散乱を中心に光散乱、質量分析、超遠心分析などの構造解析法を用いてタンパク質のナノ集合構造を調べ、テクスチャー測定やレオロジー測定を通じてタンパク質分子の化学的特性や集合構造が及ぼす力学物性への影響を評価するとともに、これらを分子の化学的性質やそれに基づく分子内分子間の相互作用と関連づけて理解することで、分子レベルの構造や相互作用と巨視的な物性を繋ぐリンクを解明し分子論的な見地から食品物性の発現機構を明らかにすることを目指している。 2022年度は、コントラスト変調中性子小角散乱法による小麦タンパク質複合体グルテン中の構造解析を行う目的で、試料となる中性子重水素化小麦タンパク質の量産を目指して重水水耕による小麦の栽培のための条件最適化を行うとともに、重水素化した小麦タンパク質グリアジンの水和凝集体を試料としてJRR-3 SANS-Uにおいて中性子小角散乱測定を行った。その結果、精密な構造解析を行うために必要となる十分な精度の実験結果を得るためには、より多量の重水素化試料を確保する必要があることが明らかとなった。そこで、重水素化試料の増産を目指して、より効率的な重水水耕栽培システムの構築に向けた検討を進めている。 また、小麦タンパク質の水和凝集体について回転レオメーターを用いた動的粘弾性測定を実施し、試料に添加した塩化ナトリウム量の違いによって動的粘弾性に相違が見られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コントラスト変調中性子小角散乱の実験を行うために十分な試料量を確保するため、重水素化小麦タンパク質を得るための大量水耕栽培を試みたが、当初の想定通りの収穫が達成できなかった。水耕の前段階となる小麦種子の播種から出穂までの過程に時間を要するため、試料調製の再試行を頻繁に実施することができないことも一因であり、条件検討を重ねている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
精度の高い中性子小角散乱実験の実施に向けて、十分な試料の確保を最優先課題とし、効率的な小麦重水水耕栽培法の確立に向けて取り組みを進める。その一方で、できる限り少量の試料量で精度の高い測定を可能とするための中性子小角散乱測定手法の改善も試みる。 さらに、多様な条件における食品タンパク質水和凝集物について、回転レオメーターによる動的粘弾性を実施するとともに、テクスチャーアナライザーを用いた圧縮・引張試験や破断測定による力学物性の相違を調べ、動的粘弾性と力学物性の相関について解明を試みる。
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Research Products
(2 results)