2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive evaluation of physical property in a solid-liquid colloidal dispersion for designing food based on the texture
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22K05527
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
渡邉 義之 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (20368369)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | テクスチャー / 固液共存系 / コロイド / 力学物性 / 包括的評価 / 粒子径 / ゲル状粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの場合、摂食時の口腔内は固体と液体が入り混じった状態であり、一種のコロイド系と見なし得る。この時の固体サイズが食感に寄与することは想像に難くないが、スケールが大きいほどそのインパクトがわかりやすくなることが予想される。そこで、食品コロイドの形態定義を講義に捉え、ミリオーダーの粒子により形成される固液分散系を対象に、そのテクスチャーに代表される力学物性を包括的に評価する手法の構築を目標として、分散質である固体粒子および分散媒である液体溶液の有するそれぞれの特性がテクスチャーに及ぼす影響について検討した。 固体粒状食品モデルとして米粒子を、液状粘弾性食品モデルとしてカスタードを採用し、それぞれ吸水加工・消化特性および流動特性の検討から、口腔内消化と粒子径との関係や、粘性に寄与する主要成分の影響が明らかにされた。 次に固液共存系に着手した。まずはゲル状食品のモデル系として、寒天を用いて粒子径の異なるゲル状球体粒子を調製し、所定温度にてテクスチャー試験(TPA)に供した。治具や容器の選定、さらに圧縮速度と固液量比の検討から、測定条件を決定した。得られたTPA曲線から各種テクスチャー特性値(硬さ、凝集性、付着性、咀嚼性)を算出した。固体粒子集合系の硬さは粒子1個の場合よりも低く、水を分散媒とした固液共存系では凝集性と付着性が固体系よりも高かった。また、共存系の硬さは固体系と同等の粒子径依存性を示したが、凝集性・付着性は異なった。さらに、粒子径が小さい共存系では温度による硬さおよび咀嚼性の差異が認められなかったが、粒子径が大きいほど温度の影響が顕著になり、低温域ほど硬さおよび咀嚼性が高い値を示した。 固液共存系のテクスチャーに及ぼす粒子径の影響が、ゲル状粒子をモデルとして示されるとともに、異種の食品粒子を検討する手法が確立できたことは、本研究の遂行において大きな意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では各種試料のテクスチャー特性を得ることが求められ、テクスチュロメーターによる計測が必要不可欠であるが、本機の導入および使用が年度後期に入ってからになったこともあり、測定データの取得がやや遅れ気味にならざるを得なかった。しかしながら、その後の実験は順調に進行し、数多くの重要な知見を集積することができている。 本研究では食品試料の力学物性を包括的に評価する手法の構築を目標としているため、測定試料を幅広く扱うことが求められる。そこで、研究に着手するに際して、対象とする食品試料を分類し、まずはそれぞれを分けて扱うこととした。分散質である固体粒子は、ゲル状(寒天やコンニャクなど)、脂肪状(チーズやバターなど)、細胞状(米や野菜・果実など)および繊維状(肉など)試料に分けて検討することとした。そして、分散媒である液体溶液は、水や希薄溶液などのニュートン性流体と、多糖などの増粘性物質が溶解した非ニュートン性流体について、それぞれ検討するに至った。 1年目である2022年度は、まずはゲル状粒子について検討を進めた。固液量比、固体粒子径、粒子形状(球体と立方体)、固体成分濃度、固体成分の種類(寒天とコンニャク)、温度、液体流動特性値(粘性定数、降伏応力、剛性率およびチキソトロピー特性値)といった因子について、固液共存系のテクスチャーに及ぼす影響が検討され、現象の理解が図られた。これまでの取り組みによって、検討手法が概ね確立できたため、これらを今後の他種試料の利用に適用して研究目標の達成に努めることができる。また、ここまでの進捗から今後の進行に要する期間をある程度推し量ることができるが、装置導入後のペースを考慮すると、残りの期間での目標達成が可能であることが十分に予想できる。したがって、順調な進捗を示しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での大きな研究計画の変更予定は無く、ここまでの知見を基に、他の試料についての検討を継続して進めていく。固体試料は、脂肪状、細胞状および繊維状粒子であり、液体試料にはニュートン性流動を示す水や希薄溶液だけでなく、増粘性成分を含んだ非ニュートン性流体を用いる。その際に、現行の2バイト圧縮法によるテクスチャー特性値の取得に加え、クリープ試験(ヒステリシスループ試験)と粘弾性モデル式による解析を適用し、粘弾性についての詳細な情報の取得を試みる。このことにより、静的力学特性値を粘性項と弾性項に分離して検討することが可能になるものと考えられる。 続いて、使用した固体および液体試料の物理的および化学的特性と、得られた固液共存系テクスチャーのデータを用いたデータマッピングおよびデータマニングを行う。固液共存系コロイドの物性データについて多変量解析を適用して、物性データのパターン抽出と特徴の認識を試みる。さらに、各種物性データおよび特性値に及ぼす諸因子の影響から、固液共存系の内部構造および物質状態を推測する。不足と思われるデータが認められれば、追加実験を行い、該当データを補足する。 そして、既製食品の物性計測と官能特性との相関関係についての検討と、データプロフィルの総合解析および最終成果の整理・確認を行う。特徴的な物性を有している既製食品および食品素材を抽出し、それらの諸物性を計測し、各種特性値を取得する。また、官能試験を実施し、得られた物性に関わる官能特性スコアと、先の計測で得られた物性特性値との相関関係について、多変量解析を適用して検討する。以上の結果から固液共存系食品のおいしさと物性について考察するとともに、包括的な物性の計測および評価手法の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
2022年度分の物品費は予定を若干超えた支出であった一方で、人件費・謝金およびその他として計上していた予算については、1回の学会参加費(オンライン学会)のみの支出となった。2022年度内に予定していた論文作成に係る英文校閲料(人件費・謝金)と論文投稿・掲載料(その他)が未使用であるため、次年度使用額が生じることとなった。しかしながら、現在、研究成果についての論文作成および投稿準備が進められており、計上していた経費はほぼ予定通りに2023年度には支出することが想定されている。
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