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2023 Fiscal Year Research-status Report

酵母菌体内酵素が関与する清酒の劣化臭「老香」生成機構の解明と新規抑制法の開発

Research Project

Project/Area Number 22K05537
Research InstitutionFukushima University

Principal Investigator

藤井 力  福島大学, 食農学類, 教授 (40372198)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 高橋 亮  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (40391049)
松本 大志  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (50942827)
齋藤 嵩典  福島県ハイテクプラザ, その他部局等, 研究員 (20939029) [Withdrawn]
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords清酒 / 貯蔵劣化臭 / ジメチルトリスルフィド / 酵素反応 / 酵母 / 老香
Outline of Annual Research Achievements

老香(ひねか)は清酒の品質を毀損する貯蔵劣化臭で、ジメチルトリスルフィド(DMTS)が主要な原因成分である。DMTS生成経路は2系統が見出されたが、本研究では死滅酵母から漏出された酵素と基質が関わる酵素反応(DMTS生成経路)を解明し、酵素反応の阻害による老香抑制技術開発と普及を目的としている。酵母のMDE1遺伝子またはMRI1遺伝子の機能が欠損すると当該酵素反応が進みにくくなることから、本年度は、これらの遺伝子が酵素反応の酵素そのものをコードしているのか、基質生成に関わる遺伝子なのか解析できる材料や方法の検討を中心に研究を進めた:①酵母遺伝子破壊株の作成、②酵母破砕による酵素や基質取得の試み、③酵母培養条件の検討や設定など。①では清酒酵母1倍体の当該遺伝子の破壊株を取得した。②ではガラスビーズで酵母を破砕し、基質や酵素を得る条件を検討した。③では清酒もろみを模した培養条件の検討を行った。清酒もろみから得た酵母では基質も酵素も酵母由来であることが示されたが、通常の培養した酵母を破砕しても酵素反応は進まなかった。これは通常の培養条件では、基質か酵素かその両方が酵母内に蓄積されていないことを示している。そこで、清酒もろみで蓄積する葉酸の蓄積挙動に着目し、酵素や基質を含む清酒もろみの酵母の状態を模した培養条件の検討を行った。
また、菊正宗酒造株式会社や酒類総合研究所との共同研究により、非協会系清酒酵母であるキクマサ酵母で老香生成能が低い原因を解析し、Sアデノシルメチオニン(SAM)が酵素反応を促進する結果を得て論文化した。キクマサ酵母の酵素反応ではSAMまたは変換されたものが基質であることを強く示唆する結果である。次年度は協会系清酒酵母でもSAMまたは変換されたものが酵素反応の基質なのか、MDE1遺伝子やMRI1遺伝子の機能欠損が与える影響はどうなのか検討する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

我々の研究ではDMTS測定にヘリウムガスが必要であるが、深刻なヘリウムガスの供給難の状況下では当初予定していた老香前駆体生成酵素のスクリーニング実験は実施できなくなった。また、それを補う実験もDMTS測定点数を考えて慎重に計画し直すことが必要になったことから実験開始が遅れた。現在、未知のDMTS前駆体の探索を中心に実験しているが、共同研究での知見からSアデノシルメチオニン(SAM)が基質である可能性が示され、酵素反応の実態に迫ることができそうである。少し遅れてしまったが、挽回できると考えている。

Strategy for Future Research Activity

ヘリウムガスの使用量を減らした測定の工夫などはすでに行なっており、1本でも多く供給可能な業者をあたっている。また、これまでの実績から比較的供給がある酒類総合研究所への出張による分析も行いたい。なお、共同研究により、キクマサ酵母で醸造した清酒で老香生成が進みにくいのは、酵母が生産するSアデノシルメチオニン(SAM)が少ないからであることを示唆する結果を得て論文化した。この研究の中で、加熱処理をしていない清酒にSAMを添加すると酵素反応が促進される結果を得たことなどから、SAMもしくはSAMの変換された物質が基質となっている可能性が高いと考えている。多くの酒蔵が使用する協会系清酒酵母でも同様か、この点に焦点をあて、より詳細で直接的な結果を得られるよう研究を進める。
次年度は、今年度作成した酵母遺伝子破壊株や酵母破砕方法、酵母培養方法を利用する。また、日本醸造協会から我々の作成したMDE1遺伝子またはMRI1遺伝子の変異株が販売されたことから、当該変異株を用いた醸造で得た清酒や酒粕を利用し、酵素反応の実態に迫りたい。

Causes of Carryover

深刻なヘリウムガスの供給難の状況下では当初予定していた老香前駆体生成酵素のスクリーニング実験が実施できなくなったことに加え、DMTSの分析点数を大幅に抑制せざるを得ず、実験計画や試験区を慎重に精査し直したため。スクリーニング実験に代わり、酵素反応の基質解明に力を入れ、当初計画していなかった実験を多く行っている。次年度は、今年度作成した酵母遺伝子破壊株や酵母破砕方法、酵母培養方法を利用する。また、日本醸造協会から販売された当該遺伝子の変異株を用いた醸造で得た清酒や酒粕も利用する。場合によっては期間を延長し、試験計画の変更により遅れた分を取り返したいと考えている。

  • Research Products

    (1 results)

All 2024

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] Effect of S-adenosyl-methionine accumulation on hineka odor in sake brewed with a non-Kyokai yeast2024

    • Author(s)
      Shibata Yusuke、Yamada Tasuku、Ikeda Yuriko、Kanai Muneyoshi、Fujii Tsutomu、Akao Takeshi、Goshima Tetsuya、Isogai Atsuko、Takahashi Toshinari
    • Journal Title

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      Volume: 137 Pages: 268~273

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2024.01.004

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2024-12-25  

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