2022 Fiscal Year Research-status Report
ワイン由来タンニンおよび新規産膜抑制成分による微生物汚染抑制法の開発
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22K05539
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
斉藤 史恵 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00625254)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ワイン / 微生物汚染 / 産膜 / 産膜性酵母 / 抗菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ワイン製造で微生物汚染を引き起こす産膜性酵母に対して抑制活性を示す成分をワイン中から探索し、さらに本成分を実際のワイン製造に応用して微生物汚染を防止することを目指している。令和4年度は,産膜形成抑制が認められた市販メルローワインを用いて2つの実験項目を行った。 ① 産膜抑制成分の分離:産膜性酵母を接種しても産膜形成が生じなかった市販メルローワイン(以下、非産膜ワインとする)を担体が異なる3つのカラムクロマトグラフィーを用いて成分分離を行った。さらに得られた画分を用いて産膜形成試験を実施し,抑制成分が含まれる画分を調べた。まず、非産膜ワインをDiaion HP-2カラムに添加し、0.1% トリフルオロ酢酸(TFA),50%メタノール、70%アセトンの3つの溶出画分を得た。このうち、産膜形成抑制活性が70%アセトン画分に認められた。次に、70%アセトン画分をToyopearl HW-40カラムに添加し, 0.1% TFA、50%メタノール、30%、50%、70%、100%アセトンの6つの溶出画分を得た。このうち、産膜形成抑制活性が50%メタノールと30%アセトン画分に認められた。さらに50%メタノール画分をシリカゲルカラムに添加し,酢酸エチル/メタノール混合溶媒(7/3、v/v)で展開したところ、2か所の溶出画分範囲で活性が認められた。 ② 産膜抑制成分の作用機構の推定:非産膜ワインと産膜性酵母を接種すると産膜形成が生じるワイン(産膜ワイン)を用いて、産膜抑制成分の作用機構の推定に着手した。各ワインに産膜性酵母を接種すると、非産膜ワインに接種した産膜性酵母は生菌率が低下することが明らかとなった。このことから、産膜抑制成分は抗菌的作用により産膜形成を抑制している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①について,3種類のカラムを用いて活性成分分離を行ったが、いまだ化合物が複数混在している状況であり、引き続き成分の分離方法の検討と活性成分の同定を行う必要がある。②について、当初計画では産膜抑制成分の作用機構の推定は令和5年度に実施する予定ではあったが先行して実施した。その結果、抑制成分に抗菌的作用があることが示唆された。このことで、①の活性成分分離において、抗菌活性評価を新たな活性画分のスクリーニングに使用できる可能性がでてきた。 当初計画からの変更点として、ワイン醸造モデルでの評価法確立を予定していたが実施しなかった。その理由としては、活性成分の分離作業に重点を置いたためである。本評価法の確立は、令和5年度の実施項目とする。
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Strategy for Future Research Activity |
①非産膜ワインからの産膜抑制成分分離と同定:すでに活性成分の絞り込みがされているため、さらに成分の分離精製と精製した化合物の同定を目指す。②マスカット・ベーリーA(MBA)由来産膜抑制成分の探索:MBAワインでも同様に産膜抑制成分の探索を行った結果、産膜形成は抑制するものの抗菌活性は示さない成分が存在する可能性が示唆された。そこで、非産膜MBAワインからも同様に産膜抑制成分を引き続き分離精製し、成分同定を目指す。③産膜抑制成分の作用機構の推定:産膜抑制の作用機構として、産膜性酵母に抗菌的作用を示すだけでなく、産膜性酵母の疎水性や凝集性を変化させることで抑制することも考えられる。そこで、産膜性酵母の疎水性や凝集性を測定する方法を確立する。④ワイン醸造モデルでの評価法確立:MRまたはMBAワインを産膜性酵母の接種有無で醸造し、アセトアルデヒド量を測定する。産膜形成の有無にアセトアルデヒド量が用いられるか検討する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた試料ワインの納入が間に合わなかったため、残高が生じた。本残高は、令和5年度で実施する試料ワインの購入費として使用する。
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Research Products
(1 results)