2022 Fiscal Year Research-status Report
粒子追跡マイクロレオロジーによる食品関連ソフトマターの非ニュートン流動の評価
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22K05541
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
槇 靖幸 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50400776)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 粒子追跡法 / ソフトマター / レオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのゲル状食品では、応力の印加によりゲル-ゾル転移を生じる(チキソトロピー)。ゾルとゲルの間の転移は、ゲル化点近傍における臨界ダイナミクスにより特徴付けられる。ゲル化のモデル物質として、構造の明確なtetra-PEGゲルを選び、粒子追跡マイクロレオロジーによるゲル化の臨界ダイナミクスの計測を行なった。得られた臨界指数をパーコレーション理論と詳細に比較することで、指数のポリマー濃度依存性の起源を明らかにした。ここで用いた方法論は、ゲル状食品におけるチキソトロピー回復の解析にも応用できると考えられる。 食品関連ソフトマターのモデル物質として、多糖類であるザンサン水溶液のレオロジー測定を行った。非ニュートン粘度の濃度依存性のデータに基づいて、今後は微小流路の設計を進める予定である。液体の非ニュートン粘度の高速極限の値は、その液体を潤滑液として用いたときの滑り摩擦を評価する際に重要となる。そこで、ザンサン水溶液中でのゲルの滑り摩擦を測定し、上記のデータを用いることにより潤滑層の厚みを定量化することができた。この結果は、近年注目されている、柔らかい界面の滑り摩擦と食感との関連において重要である。新たに導入した蛍光顕微鏡を用いて、静止状態のザンサン水溶液の粒子追跡マイクロレオロジーを測定した。ザンサン濃度の上昇によって粘弾性が次第に顕著になり、1%程度でプローブ粒子の変位が測定の空間分解能と同程度になる(測定限界に達する)ことを確認した。今後は、微小流路による巨視的な流動と粒子追跡マイクロレオロジーを組み合わせることにより、この測定限界を越えて粒子追跡マイクロレオロジーの適用領域を拡大することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、最初に顕微鏡に微小流路を組み込み、単純なニュートン流体で動作確認をすることにしていたが、流路設計の前に、想定する測定対象の線形及び非線形レオロジーの概要を得る方が良いと考え、実験の順番を入れ替えて、先に食品関連ソフトマターのモデル物質であるザンサン水溶液の非ニュートン粘性と静止状態での粒子追跡マイクロレオロジーの測定を行った。これに加えて、今後チキソトロピー回復の解析を行う際に有効な、粒子追跡マイクロレオロジーを用いたゲル化の臨界ダイナミクスの測定と解析の方法についての知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
ザンサン水溶液の非ニュートン粘性と粒子追跡マイクロレオロジーの結果に基づいて、微小流路の設計と評価を進める。同時に、チキソトロピー性のゲルとエマルションのモデル系の構築についてもそれぞれ進め、微小流路の設計の際にはこれらの系の物性も必要に応じて考慮する。
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Causes of Carryover |
本年度は微小流路の構築を行わなかったため、次年度使用額が生じた。これは翌年度の助成金と合わせて微小流路の設計・構築に使用する予定である。
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