2023 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患に関連する中枢トリプトファン代謝の末梢調節
Project/Area Number |
22K05543
|
Research Institution | Shibata Gakuen University |
Principal Investigator |
奥野 海良人 柴田学園大学, 生活創生学部, 准教授 (50623980)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | キヌレニン / トリプトファン / IDO / TDO / プロバイオティクス / プレバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
8週齢Wistar系ラットを用い、飼料に0.7%(w/w)乳酸菌死菌体を混餌し投与したプロバイオティクスならびに飼料に10%(w/w)麦芽エキスを混餌し投与したプレバイオティクスがトリプトファン‐キヌレニン代謝に及ぼす影響について調べた。 門脈、肝静脈、下大静脈血中のKYN濃度およびKYN/Trp比(Trp-KYN代謝を反映)を調べた結果、乳酸菌投与群において特に門脈血中でのキヌレニン濃度とKYN/Trp比が増加しており、腸管でのTrp-KYN代謝の活性化が示唆された。 さらに小腸および肝臓のTrp-KYN代謝酵素IDOおよびTDOの活性を調べたところ、肝臓TDOは変化していなかったが小腸IDOは約2倍に活性化されていた。小腸は機能学的にパイエル板部と非パイエル板部があるため、それぞれの部位でのIDOのmRNA発現量を調べたところ、パイエル板でのIDO mRNAの発現が増加傾向にあったが、非パイエル板部分のmRNA発現は差が無かった。すなわち門脈血液中のKYN濃度の増加は小腸の特にパイエル板のIDOの活性化によるものであることが示唆された。 KYNは血液から脳内に輸送されるが、脳内KYNレベルに変化はなかった。つまり全身レベルで見た場合、血中KYN濃度は恒常性が維持されていたと考えられる。すなわち、腸管で増加したKYNが脳内に移行することによる3-HKやQUINといった悪玉の化合物増加のリスクは低いと考えられる。 麦芽エキスの投与でも乳酸菌投与と同様、門脈血中KYN濃度とKYN/Trp比の増加が認められ、小腸IDOの活性化も認められたが小腸IDOのmRNA発現量は非パイエル板で発現が増強していた。すなわち粘膜固有層への免疫細胞の浸潤が考えられる。また脳においてTrpおよびKYNレベルの上昇傾向が認められたがメカニズムは不明であり、より詳細な解析の必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り進行している
|
Strategy for Future Research Activity |
プロバイオティクスやプレバイオティクスは炎症抑制作用によってKYN合成を抑えると考えていたが、実際は腸管でのIDOの活性を上昇させてKYN合成を高めていることが明らかとなった。ただしラットの体重や摂食量、行動から判断すると、これは炎症を惹起しているというよりは免疫が賦活化されているということだと考えられる。KYNは芳香族炭化水素受容体(AhR)を介して免疫を抑制する作用が有るため、腸管での不必要な炎症を抑制する可能性がある。実際、炎症性腸疾患やリーキーガットは必要以上の炎症を引き起こし、脳神経疾患発症に関連しているとも言われている。そのため、今後はプロバイオティクスやプレバイオティクスがKYN合成増強によって腸管の炎症を抑える可能性についても検討したい。 また当初の計画通り、高タンパク質食やストレス、炎症惹起がTrp代謝に及ぼす影響についても調べていく。
|
Causes of Carryover |
研究資材の価格変動などにより微細な差異が生じた。繰り越された予算は次年度の消耗品に充てていく。
|