2022 Fiscal Year Research-status Report
エタノールによる耐塩性と疑似的な低酸素誘導メカニズムの解明
Project/Area Number |
22K05564
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
佐古 香織 近畿大学, 農学部, 助教 (60722395)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | エタノール / 高塩ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は、高塩、高温、乾燥など様々な環境ストレスにさらされている。こうした環境ストレスは農作物の収量に甚大な被害をもたらしている。持続可能な食糧生産実現のためには、環境ストレスを克服する肥料や作物の開発が危急の課題である。これまでに私は低濃度のエタノール処理が抗酸化酵素群の転写を誘導することによって、活性酸素の蓄積を抑制し、植物の耐塩性、強光ストレス耐性を強化することを発見した。しかし、エタノール処理がどのように抗酸化酵素の転写を誘導するかは未解明である。 さらに、継続的な外生エタノール処理は生育に悪影響を及ぼすことが示された。RNA-seq解析から、外生エタノール処理は低酸素ストレス応答性遺伝子の発現を誘導することが明らかになった。本結果から、エタノール処理は擬似的な低酸素状態を誘導することによって好気呼吸が低下したことによって生育に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。従って、本研究ではエタノールによる耐塩性の分子メカニズム解明ならびに、エタノール処理による低酸素誘導の分子メカニズムを解明することによって、ストレス耐性と生育を両立した技術の開発を目指す。 当該年度はエタノールによる耐塩性機構解明を目指して、エタノールによるストレス耐性時に機能する転写因子の探索を実施した。シロイヌナズナ転写因子変異体ライブラリーを用いたスクリーニングの結果、エタノールによる耐塩性に関与する転写因子として8因子を同定した。このうち、活性酸素除去に機能する遺伝子の発現誘導に関与している転写因子として2因子に絞り込んだ
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を構成する各実験課題に関しておおむね計画通りに進展しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度に得られた転写因子が制御する下流遺伝子の同定を目指す。さらに、エタノールによる低酸素応答に関与する候補因子を同定したため、これら遺伝子のエタノール存在下における機能解析を実施する。
|
Causes of Carryover |
予定していたトランスクリプトーム解析を別予算で実施できたため。この予算は生化学的解析に使用し、課題達成を目指したい。
|
Research Products
(5 results)