2022 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異育種にデジタル変革をもたらす最適照射条件決定理論の構築と実証
Project/Area Number |
22K05579
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
市田 裕之 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (80513382)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重イオンビーム / 変異誘発 / 全ゲノム解析 / 植物 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
重イオンビームはDNA二本鎖切断に伴う欠失変異を誘発する、効率的な物理的変異原として広く利用されている。効率的な変異誘発を実現するためには、ゲノムあたりに可能な限り多くの変異を誘発すること、すなわち変異率を最大化するための条件設定が重要である。しかし、従来から用いられてきたアルビノ出現率などを指標とした方法は、多大な時間と労力を要することが課題となっている。 本研究では、超並列シーケンサーのリード配列から変異型アリルを直接検出し、ゲノム全体の変異数を予測することで最適照射条件を決定する、新しい方法論を確立することを目的とした。本年度は、来年度以降に行う計画であったDNA変異数を高精度に予測するアルゴリズムを開発に必要な、植物サンプル(集団)の育成と配列データの取得を進めた。 具体的には、植物のモデルとしてミヤコグサを選択し、乾燥種子と吸水種子に、ネオンイオン(LET: 60 keV/μm)または炭素イオン(22.5, 60 keV/μm)を異なる線量を照射した。これらを個体別に育成することで、各条件について15系統以上の独立の系統を構築した。M2世代の種子をセルトレイに播種し、各系統ごとに10個体のM2植物を混合したプールを作成し、DNA抽出を完了した。また、微生物のモデルとして、酵母に炭素・アルゴン・鉄イオンを照射後にプレート上に形成されたコロニーを収集して保存した。これらの一部を個別に培養してゲノムDNAを抽出し、全ゲノムシーケンシングを行った。今年度は28の条件で照射した計480系統について、約100倍ゲノム相当の配列データを取得し、参照ゲノム配列へのマッピングと変異解析を完了した。
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