2022 Fiscal Year Research-status Report
野生タルホコムギにおける気孔形質の多様性解明とパンコムギへの応用
Project/Area Number |
22K05586
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
爲重 才覚 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (20725006)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パンコムギ / タルホコムギ / 気孔 / ナチュラルバリエーション / 顕微鏡 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
気孔は植物の光合成や乾燥耐性に関わる重要な機能を担う。作物の気孔の密度とサイズを育種により最適化するためには未だ様々な基礎的知見が不足している。特に異質六倍体作物であるパンコムギの育種において、野生二倍体タルホコムギは雑草であるが世界の多様な環境で生育しており、育種上有用な遺伝資源として期待されている。 本研究では、二倍体タルホコムギ集団の気孔形質の多様性を調べ、遺伝資源としてのタルホコムギ集団の特性を明らかにするとともに、タルホコムギから六倍体パンコムギへ形質が表皮の細胞レベルでどのように遺伝するかを調査し、コムギ育種への応用可能な材料を提供することを目指している。また並行して顕微鏡を用いた形質調査において汎用で有用な顕微鏡システムの開発の一環として、気孔計測をモデルケースとして計測システムの高精度化、高機能化にも取り組む。 2022年度末までにタルホコムギ集団およびそれらを利用した合成パンコムギ集団の一部サンプルについて葉の表皮の顕微鏡撮影を行い、画像データを収集した。またそれらの画像解析から気孔密度、気孔サイズ等のデータを得るため、深層学習による画像分類の教師データの作成を進めた。さらにタルホコムギ、合成パンコムギともに各シリーズを1シーズン分ずつ追加で葉サンプルを収集した。 また気孔に関する遺伝子を含め植物の遺伝子機能解析において有用な、遺伝子操作実験のための技術開発を研究協力者とともに行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにタルホコムギ集団およそ200系統を2シーズン分、それらを利用した合成パンコムギ集団およそ80系統1シーズン分について葉の表皮の顕微鏡撮影を行い、画像データを収集した。またそれらを画像解析に供することで気孔密度、気孔サイズ等のデータを得るため、深層学習による気孔画像検出の教師データの作成を進めた。このとき気孔だけでなく毛・突起の画像も同時に検出することで総合的な検出精度を高めることを目指して気孔以外の毛などの教師データ作成にも取り組んだ。さらにタルホコムギ集団、合成パンコムギ集団ともに多数のシーズン分のデータ収集および解析を目指しており、各系統シリーズを1シーズン分ずつ追加で葉サンプルを収取した。タルホコムギおよび合成パンコムギを合わせて大規模な系統集団であるが順調にデータを収集できており、解析の準備も進んでいる。またGWAS等による遺伝子座の同定を見据えて、シロイヌナズナを利用した遺伝子機能解析の準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらにタルホコムギ集団および合成パンコムギ集団の葉のサンプル追加採集と顕微鏡画像データの収集を継続し、当面の目標である3シーズン分の収集を完了する。さらにタルホコムギの表皮の自動計測のため、顕微鏡画像から気孔および毛などを計数、計測するための機械学習用教師データのさらなる拡充と、深層学習によるタルホコムギの表皮画像に適用できる気孔検出モデルの構築を進める。そして構築したモデルを元にタルホコムギ集団の気孔形質等の計測を行い、各系統の採取地の地理的データとの関連を解析する。合成パンコムギ集団についても並行して同様に計測を進め、親系統の二倍体形質との関連を探る。このとき、気孔密度および気孔サイズ、毛などその他の表皮形質、の複数の側面から解析する。また遺伝子座の同定を目指してタルホコムギ集団のGWAS解析を行う。
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Causes of Carryover |
画像処理について既存のハードウェアである程度対応できているため、上記機種の新規購入を延期して価格と性能の最大化を検討していること、また感染症の状況を鑑みて参加を見送った国際学会があったことが主な理由である。また消耗品費は無駄の削減などで安価に済んでいる。次年度は、画像の機械学習のための教師データ作成費用(外注費)に一定の費用がかかるが、これの規模を大きくして解析精度を向上することを目指すため、次年度使用額として有効に利用する予定である。
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Research Products
(1 results)