2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05587
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
塩野 克宏 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (20610695)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酸素 / センシング / 湿害 / 洪水 / 根 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では水田転換畑で問題となる畑作物の耐湿性向上が求められている。湿生植物が形成する酸素漏出バリアは耐湿性の重要形質であるものの、その感知誘導に関わる制御機構は未解明のままである。本研究ではイネの酸素漏出バリア形成を誘導する環境因子(物質)とその物質を感知する組織を特定し、どのような植物ホルモン・遺伝子ネットワークがバリア形成を制御するのかを明らかにする。さらに、イネと畑作物(オオムギ)の間の環境変化の感知機構の違いを明らかにすることで、オオムギに欠けているシグナルネットワークの特定を試みる。以上のように、畑作物に酸素漏出バリア機能を付与するために重要な分子の特定を目指し、研究を進めている。 前年度までに、湛水した土壌で早い段階で変化する、硝酸態窒素の減少がイネの酸素漏出バリアを誘導する環境因子であることを明らかにした。さらに、split-rootシステム(根の一部だけ処理する栽培系)により、硝酸態窒素の減少を感知する組織の特定を進めたものの、栽培系が安定せず、この研究は難航していた。 令和5年度、Split-rootシステムによる栽培評価実験をしたものの、残念ながら安定した結果を得ることができなかった。そのため、硝酸態窒素の減少と植物ホルモンの関係を調べることにした。その結果、ABAの生合成阻害により硝酸減少によるバリア誘導が抑制された。すなわち、硝酸の減少が、ABAシグナリングを介して行われていることが示唆された。 令和6年度、植物ホルモンネットワークと硝酸の減少の関わりについて、網羅的な発現解析により分子メカニズムを詳細に調べる。当初目的である、酸素漏出バリアを誘導するイネの環境感知誘導に関わる制御機構の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった、Split-rootシステムによる栽培評価実験はうまく進まなかった。しかし、植物ホルモンネットワークを介したバリア形成について鍵となる結果を得ることに成功した。そこで、ホルモンネットワークを軸に、硝酸減少の感知に関わる分子メカニズムを詳細に調べていく。当初目的である、酸素漏出バリアを誘導するイネの環境感知誘導に関わる制御機構を明らかにすることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度、植物ホルモンネットワークと硝酸の減少の関わりについて、網羅的な発現解析により分子メカニズムを詳細に調べる。また、イネとオオムギにおける遺伝子の発現パターンの比較を試みる。これにより、当初目的である、酸素漏出バリアを誘導する環境感知誘導に関わる制御機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していたよりもその他(次世代シーケンスによるRNA-seq)の支出が少なかったため次年度使用額が生じた。残金は次年度のその他(次世代シーケンスによるRNA-seq)と合算して使用する。
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