Fundamental studies on cultivation management techniques and improvement of fiber quality in Itobasho, a traditional industrial crop

2023 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 22K05600
• Research Institution: University of the Ryukyus
• Principal Investigator: 上原 直子 琉球大学, 研究推進機構 共創拠点運営部門, ポスドク研究員 (90899197)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 諏訪 竜一 琉球大学, 農学部, 准教授 (30560536)
• Project Period (FY): 2022-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: イトバショウ / 工芸作物 / 繊維作物 / 繊維品質 / 炭素動態 / シンク・ソース

Outline of Annual Research Achievements

1．芭蕉布品質となる質の良い繊維収率を増加させるための施肥体系
施肥区は施肥を行わない無施肥区，春施肥として1株あたり窒素・リン・カリウムを20g施用する20区，年間の施肥量は1株あたり20gだが春と秋に10gずつ分けて施用した10-10区，および春と秋に1株あたり20gずつ施用した20-20区の4処理区を設けた．葉打ちは6月7日および8月21日に行い，2023年1月15日に喜如嘉芭蕉布染織工房にて採繊を行った．充分に大きく成長した株を苧倒し（収穫）し採繊を試みたが，良い繊維が採れるほどには成熟しておらず，芭蕉布の原料に適した芭蕉糸は得られなかった．平地から植付を行った畑（未成熟な畑）では植付から5年ほどは繊維が硬い苧（株）しか取れないといわれている．そのため本年度収穫した株では芭蕉布品質になりうる繊維が採繊できなかった．また芭蕉布工房にて採繊時の手触りや風合いを評価してもらったところ，栽培圃および株が十分成熟していない現時点においては施肥量や施肥回数の違い（追肥の有無）による違いはなかった．

2．「葉打ち」「芯止め」の有用性の検証と作業時期および回数の最適化
栽培圃場で育成中の株で葉打ちを行わない株を設け，2回葉打ちを行った株と葉打ちを行わなかった株を採繊し繊維品質を比べた．1．の実験同様に採繊した繊維は硬く，本来の芭蕉糸品質ではなかったが，葉打ちを行った株では収穫歩合は低いものの芭蕉布の糸になりうる繊維も幾分採れたが，葉打ちを行わなかった株では芭蕉布糸品質の繊維は得られなった．このことから葉打ち・芯止めが芭蕉布品質の繊維を得るためには必要な栽培管理行程の一つであることが確認できた．
また，葉打ち・芯止めを通して，どのように繊維の品質に影響を及ぼしているのかを調査するために，イトバショウを1/2000aポットで育成し13Cによる炭素動態実験を行う準備を行った．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

施肥が繊維品質に及ぼす影響については，一昨年度に家庭の事情にて冬場の採繊を行うことができず，施肥による繊維の評価が1年分遅れてしまった．また本年度行った採繊も株（畑地）の成熟が進んでおらず，本来の芭蕉布品質の繊維を得ることができず，施肥が繊維品質に及ぼす影響を評価できるに至っていない．
一方葉打ち・芯止めの効果については，イトバショウをポットで育成し，13Cを同化させたものを用いて処理を行う準備が整っているため，次年度処理を行い炭水化物の動態の調査を行う．

Strategy for Future Research Activity

1．芭蕉布品質となる質の良い繊維収率を増加させるための施肥体系
次年度も冬季に採繊を行い，施肥量の違いおよび施肥回数（追肥の有無）が繊維品質に及ぼす影響について，繊維成分の違いを調査する．また，本年度未成熟なため硬かった繊維の成分の比較を行うことで，イトバショウの偽茎の成熟・未成熟株の違いを明らかにする．

2．「葉打ち」「芯止め」の有用性の検証と作業時期および回数の最適化
13Cを同化した株に葉打ち・芯止め処理を行い，光合成器官である葉を失うことで，一時貯蔵器官に蓄積された非構造性炭水化物および構造性炭水化物がどのように再転流・分配され，その結果，構造性炭水化物である繊維の成分（セルロース，ヘミセルロース，リグニン）にどのような影響をもたらすか定量分析を行う．

Causes of Carryover

令和４年度に家庭の事情により採繊が行えなかったこと，および本年度採繊をおこなった株も未成熟だったことにより，施肥が繊維品質に及ぼす影響について，芭蕉布糸品質の繊維が得られていないため，次年度以降も実験の継続が必要である．また，採繊が冬季になるため，次年度採繊した繊維の成分分析は来年度以降になる見込みである．得られた繊維については，芭蕉布染織工房にて手触り・風合いの聞き取り調査を行ったのち，セルロース，ヘミセルロース，リグニン含有量の測定を行う．
また，本年度13Cを付与し炭素動態を調べる実験は，次年度葉打ち・芯止め処理を行い，器官分配（葉・茎・根）および成分分配（糖・デンプン・構造性炭水化物）を測定する．