2023 Fiscal Year Research-status Report
カンキツ果実におけるアントシアニン蓄積の分子機構の解明
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22K05610
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
馬 剛 静岡大学, 農学部, 准教授 (20767412)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アントシアニン / ブラッドオレンジ / 転写因子 / 着色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、カンキツ果実におけるアントシアニン蓄積メカニズムを明らかにすることにより、ブラッドオレンジ果実の成熟過程における着色機構の全容を解明し、効果的な収穫前・収穫後の着色促進技術を開発することである。 令和5年度には、ブラッドオレンジ果実におけるアントシアニン生合成の低温誘導メカニズムを解明するため、前年度に5℃、10℃、15℃の温度処理を行った培養砂じょう(果肉)を用いて、マイクロアレイ解析を実施した。これにより、ブラッドオレンジ‘モロ’の培養砂じょうには142個のbHLH遺伝子および186個のWD40遺伝子が検出された。そのうち、5℃処理と比較して、10℃処理では17個のbHLH遺伝子の発現が2倍以上に上昇し、15℃処理では15個のbHLH遺伝子の発現が2倍以上に上昇していた。10℃処理と15℃処理で共通して2倍以上に上昇した遺伝子が10個あった。一方、5℃処理と比較して、10℃処理では8個のWD40遺伝子の発現が2倍以上に上昇し、15℃処理では19個のWD40遺伝子の発現が2倍以上に上昇していた。10℃処理と15℃処理で共通して2倍以上に上昇した遺伝子が7個あった。以上の結果より、上記の10個のCitbHLH遺伝子と7個のCitWD40遺伝子の発現パターンは、アントシアニンの生合成遺伝子の発現パターンとよく一致したため、これらの転写因子遺伝子はブラッドオレンジ果実のアントシアニン生合成の低温誘導に関与することが示唆された。既に報告されたMYB転写因子のCitRubyと、本研究で単離したCitbHLH1をアグロインフィルトレーション法を用いて一過的に過剰発現させた。また、組織からアントシアニンを抽出し、HPLCにより分析を行った。その結果、ブラッドオレンジ果実のアントシアニン生合成には、CitRuby とCitbHLH1の両方とも必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に5℃、10℃、15℃の温度処理を行った培養砂じょう(果肉)を用いて、マイクロアレイ解析を行うことにより、10個のCitbHLH遺伝子と7個のCitWD40遺伝子はブラッドオレンジ果実のアントシアニン生合成の低温誘導に関与することが示唆された。これらの候補転写因子の発現はリアルタイムPCRによりを確認した。また、アグロインフィルトレーション法を用いた一過的な過剰発現の結果より、ブラッドオレンジ果実のアントシアニン生合成には、CitRubyとCitbHLH1の両方とも必要であることが明らかになった。 以上より、今年度の研究は「おおむね順調に進展している」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は以下のような研究を計画的に遂行する。収穫前および収穫後の果実を用いて、令和4年度と令和5年度でアントシアニンの蓄積の誘導が確認された処理方法の有効性を検証する。光の透過性(波長や強さ)が異なる果実袋サンテを用いて樹上にある果実を袋掛けし、果実の着色への光の影響を探索する。また、樹上にある果実に課題①でアントシアニンの蓄積の誘導が確認された植物ホルモンを散布処理し、果実の着色への影響を探索する。一方、ブラッドオレンジの培養砂じょうに5-アミノレブリン酸(ALA)およびフェニルアラニン(Phe)処理を行い、これらのアミノ酸がアントシアニンの蓄積に及ぼす影響を調査する。
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