2022 Fiscal Year Research-status Report
種子をまいて1年で開花するサクラの幼樹開花原因遺伝子の解明とその果樹育種への応用
Project/Area Number |
22K05613
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
江角 智也 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (30548764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白澤 健太 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 主任研究員 (60527026)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ワカキノサクラ / 幼樹開花 / 一年生 / サクラ / 実生 / RAD-seq解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の準備段階で得ていたワカキノサクラ×ソメイヨシノの交雑による実生後代の幼樹開花形質の分離集団(幼樹開花性:3年目未開花=9:60)を用い、RAD-seq解析によって幼樹開花個体に特異的なSNPsの検出を試みた。しかしながら、集団の個体数が不十分だったせいか、幼樹開花に関連するSNPsの検出はできなかった。そこで、再度、ワカキノサクラ[種子親] 2個体(A、B)とソメイヨシノ[花粉親]の交雑による後代集団の作出を行った。播種後1年目に実生の開花を観察したところ、開花:未開花の分離比は、個体Aの後代集団で24:39、個体Bの集団で36:22となり、全体では60:61となった。種子親個体によってその後代集団における幼樹開花形質の分離比が異なることや、以前作出した後代集団での分離比とも異なっていたことなど、新たな疑問点が生じた。今後新たな後代集団も含めた遺伝解析を進めていく。 また幼樹開花を示した個体を用いた戻し交雑による後代作出実験を行った。この実験では、6月に採種した交雑種子を同年秋に発芽させて温室で実生個体を生育させる試みも行った。幼樹開花性を示した10個体を片親にして戻し交雑を実施したが、多くの組合せにおいて交雑種子が得られた。サクラ属植物は自家不和合性によって戻し交雑で種子ができない組合せが半数程度出ると想定していたが、予想外の結果であった。ワカキノサクラの受精および種子形成の生殖プロセスにおいて、普通のサクラと異なる何か特異的な現象が起こっているかもしれない。また、採種年の秋から実生を促成栽培することにも成功した。これら促成で生育させた実生の開花についても今後調査を進めていく。 さらに、‘ワカキノサクラ’にオウトウの花粉を授粉する種間交雑によっても種子を得ることができ、うち2個体が発芽して順調に成長している。雑種個体の調査および新たな雑種作出も進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定から外れた調査・実験結果が出てきているが、1年目は計画に立てた研究内容を概ね実施できている。予想外の結果が出ていることから、2年目以降の計画は若干修正が必要であり、いくつか追加の調査や実験が必要になってくると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
事前に準備していた幼樹開花形質の分離集団のRAD-seq解析では、当初想定していたような結果が得られなかったことから、追加で後代集団を作出した。2年目もRAD-seq解析を行うことで、形質関連のSNPs検出、ゲノム上での原因遺伝子の探索を進めていきたい。幼樹開花性を示す個体を用いて戻し交雑が効率よくできることがわかったことから、戻し交雑の反復(繰り返し)を進めたり、幼樹開花性を示す個体同士での交雑を進めたりし、さらには交雑実生における自家不和合性のS遺伝子型を確認するなどして、この形質の遺伝様式やワカキノサクラの受精や種子形成の生殖プロセスに関する特徴を明らかにする調査や観察を進める。促成栽培の方法についてもさらに発芽および生育を促進できる工夫を行い、“播種同年開花育成法”の開発を進める。具体的には、5月に採種、7月には発芽させて生育を開始し、同年冬季に開花させることを目指す。その際、植物成長調節物質の処理や緑枝接ぎなども試みることで、外生的要因による幼樹開花への影響についても調査を行う。種間雑種についてはオウトウを中心に様々な種間交雑を試みるとともに、より遠縁なニワザクラ、ニワウメ、ユスラウメなどとも雑種形成を試みたい。
|
Causes of Carryover |
会計の区切り(年度替わりの3月~4月)が本研究における実験や調査の最繁忙期にあたり、作業活動に即して必要な消耗品購入の予算執行に関連して、若干の年度繰越金が生じた。次年度初頭に使用する。
|
Research Products
(1 results)