2022 Fiscal Year Research-status Report
栽培時の光環境制御によるスイートバジルの低温感受性変動要因の解明
Project/Area Number |
22K05618
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
野口 有里紗 東京農業大学, 農学部, 准教授 (10445695)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 低温障害 / 品種間差 / 酵素活性 / スイートバジル |
Outline of Annual Research Achievements |
バジルの低温感受性に差異が生じるメカニズムを葉中の抗酸化関連物質の含有量、酵素活性、植物の形態構造などから明らかにするために、これらの特性が異なる品種を選定分類する調査を行った。光と温度を一定としたLED光源の人工気象室内で栽培したスイートバジル19品種を比較した結果、葉の大きさや厚み、草丈、葉色などの表現型と5℃で貯蔵した時の障害発生程度の違いから4グループに分類した。グループのひとつは低温感受性が非常に高く、オセやスレなどの物理的接触や常温での貯蔵でも容易に褐変が生じた。イタリアンラージタイプの葉を持つグループは葉の低温感受性が低く、葉よりも先に茎に褐変を生じた。しかし低温感受性に葉の厚みや大きさおよび葉の水分率との相関は見られなかった。酵素活性のうちPPO、LOX、CATは低温障害の発生程度と高い相関を示したことから、低温感受性は先天的なPPO活性の高さとともに脂質酸化の起きやすさと活性酸素種消去能力の強さに影響されていることが推察された。 低温障害の発生程度はサンプリング節位や播種後日数、光源の種類によっても大きく変化した。LED光を用いた人工気象室での栽培サンプルよりもガラス温室栽培サンプルで障害の程度が小さくなった。しかしガラス温室栽培サンプルの酵素活性では人工気象室内サンプルのような明確な傾向を確認することができなかった。本研究では光による酸化ストレス物質および抗酸化物質の生合成とそれに関与する酵素活性の変化を想定していることから、採取前数日間の日射状況などに留意する必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
粗酵素の抽出および酵素活性の測定条件、LC/MS分析条件の検討に時間がかかったため。酵素活性測定では安定した結果が得られる抽出液と一部の活性で試験条件が決定できたが、LC/MS分析条件は最適条件を引き続き検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に低温感受性と表現型の差異で分類した4グループそれぞれから1品種を選び、光強度に対する反応性の調査を行う。また低温感受性が大きく異なるが表現型は類似している2品種を用いて、光源と光強度の双方を変化させた場合に対する酵素活性と抗酸化関連成分含有量をより詳細に確認するとともに、細胞膜過酸化やリン脂質組成が低温感受性に与える影響について測定する。また葉の形態構造が低温感受性に影響するかを確認するために、サーモグラフィーを用いて貯蔵直後の葉の温度変化の測定と貯蔵葉の断面組織構造の観察を行う。 酵素関連成分の詳細な調査を行った前述2品種の結果から、主成分分析によって低温感受性に関連の強い成分群を推定する。この推定した成分群が適切であるかについて、初年度にサンプリングして保管しているバジル19品種のLC/MS分析結果と照合して適合性を検討する。
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Causes of Carryover |
研究進行遅れにより一部の物品購入を見送ったため。 発生した次年度使用額は酵素活性測定の消耗品購入に充てる予定である。
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