2022 Fiscal Year Research-status Report
水ナス果実のテクスチャー(多汁性)を決定する遺伝子の同定と分子メカニズムの解明
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22K05626
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
瀬上 修平 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (10781156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 望 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (20252835)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナス / 水ナス / 果実形質 / 遺伝子同定 / 機能解析 / トマト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、果実の多汁性を特徴とする水ナスを材料に果実のテクスチャーに関わる遺伝子として、多汁性遺伝子(JCY)を同定し、ナスをはじめとする園芸作物の品種改良に資することを目的とする。現在までに、標準的な果実性質のナス品種と水ナスの交配後代F2集団を用いた遺伝解析により、水ナスの多汁性に関わる潜性の主働遺伝子の存在を見出し、その遺伝子座を特定している。R4年度は、①順遺伝学的手法による候補遺伝子の絞り込み、②相補性検定に向けた遺伝子組換え実験、③機能解析として予備的な遺伝子発現解析と多様なナス品種を材料に多汁性遺伝子の遺伝子型を確認した。 ①遺伝解析に用いた交配後代から自殖を進めたF4およびF5世代を用いてファインマッピングを行った。その結果、多汁性遺伝子の候補領域を100kb以下まで絞り込め、候補遺伝子を特定した。また、候補領域内がそれぞれの遺伝子型(標準型ホモ、ヘテロ接合、水ナス型ホモ)の植物体を栽培、果実を調査した結果、遺伝解析で得られた遺伝子効果と同等の結果が得られた。 ②野生(標準)型の候補遺伝子(JCY)を水ナスに導入すべく、前後配列を含む断片をクローニングし、配列の確認が完了した。 ③機能解析としては、候補遺伝子が発達中の果実で発現していること、「世界のナス・コアコレクション」といくつかの市販品種で、候補遺伝子の多型を調べた結果、コアコレクションの中には水ナス型の系統は見つからず、市販品種で多汁性の有無と遺伝子型が一致することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ファインマッピングによる候補遺伝子の絞り込みや一部の機能解析は計画通り順調に進展したものの、形質調査まで期間を要する遺伝子組換えに必要なクローニングが難航し、植物体への遺伝子導入まで至らなかったため、現在までの達成度を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子組換え実験を急ぎ進めつつ、ファインマッピングの過程で作出した多汁性遺伝子が各遺伝子型で固定された系統を用いて、機能解析を進める。その他、ジーンバンクに登録されている海外ナス品種の遺伝子解析やテクスチャーに関わるであろう細胞壁の分析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
ファインマッピング用の栽培を土耕栽培から鉢栽培に変更したことで、一部の栽培スケジュールや管理作業が圧縮され、非常勤職員の雇用日数(人件費)が予定よりも少なくなったこと、次世代シークエンス委託解析ではなく、その他の解析手法で目標を達成したこと、から次年度使用額が生じた。余剰分は機能解析として行う細胞壁成分の分析やその他ナス品種の遺伝解析に充てる予定である。
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