2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K05627
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
園田 雅俊 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 講師 (70376367)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 巻きひげ / TCP転写調節因子 / MIKC型MADS転写調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
巻きひげは、ウリ科をはじめとする一部の植物において体を支持する重要な器官である。一方、整枝誘引作業の邪魔になるため、巻きひげを持たない施設栽培に適した農業省力化用品種作出の要望があり、このためには巻きひげ形成の分子機構解明が必要である。これまでの我々の研究で、ウリ科植物の巻きひげが腋芽由来であり、巻きひげの形成にCmTCP1転写調節因子が関与することを明らかにしてきた。しかしながら、巻きひげ分化の初期過程は不明である。本研究では、CmTCP1転写調節因子の巻きひげ特異的発現を制御する転写調節因子を同定し、さらにこの転写調節因子と、腋生分裂組織の形成や側枝形成に関わる転写調節因子との関係を明らかにすることで、巻きひげ分化の初期過程を明らかにすることを目指す。 巻きひげで発現している 8 種類のMIKC型MADS転写調節因子について、酵母One-Hybrid法を用いて巻きひげ特異的発現に関わるCmTCP1遺伝子上流のシス配列に結合する因子を選別した。これら因子の巻きひげにおける発現量、並びにDNA結合能からCmTCP1転写調節因子の巻きひげ特異的発現に関与する因子として1遺伝子が類推できた。モデル植物の解析から腋生分裂組織の形成や側枝形成に関わると報告されている既知の転写調節因子に相当するメロンのオーソログ遺伝子のコード配列を決定した。今後、CmTCP1転写調節因子の巻きひげ特異的発現に関与する候補遺伝子のDNA結合配列の特定を行い、同遺伝子と腋生分裂組織の形成や側枝形成に関わる転写調節因子のメロンのオーソログ遺伝子との時空間的発現解析並びに相互作用の解析を行い、巻きひげ分化の初期過程におけるこれら因子の関係性に関して国際論文等に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の研究では、巻きひげで発現している 8 種類のMIKC型MADS転写調節因子をクローニングし、コード配列を明らかにした。これら8種類において酵母One-Hybrid法を用いて巻きひげ特異的発現に関わるシス配列への結合性を調べたところ、より結合能が高い遺伝子があることが確かめられた。巻きひげにおける発現量やCmTCP1転写調節因子のプロモーター配列への結合性から、CmTCP1転写調節因子の巻きひげ特異的発現に関与するMIKC型MADS転写因子の候補と考えられる1遺伝子が類推された。同シス配列への結合を示したMIKC型MADS転写調節因子については、リコンビナントタンパク質を用いてゲルシフト法およびSELEX法を用いてDNA結合配列を明らかにする予定であったが、解析するのに必要な十分な発現量が得られなかったため、別の発現ベクター(GSTとの融合タンパク質)を用いて発現条件を検討してリコンビナントタンパク質の作製を行っている。また、In situ hybridization法を用いた発現解析では、解析に必要な遺伝子として、腋生分裂組織や側枝形成に関わる既知遺伝子のメロンのオーソログ遺伝子のコード配列を明らかにすることができた。CmTCP1の発現は巻きひげ形成の初期から観察できるが、同条件の解析方法ではMIKC型MADS転写因子のシグナルが弱く、巻きひげ形成のどのタイミングでどの部位で発現するか、CmTCP1転写調節因子との相関を明確にすることが出来なかったため、さらに条件を検討して詳細な解析を行う予定である。1年目では解析に必要なコンストラクト作製が中心となってしまったが、2年目の転写活性化能の検討に必要なコンストラクト作製も行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目はリコンビナントタンパク質の作製条件やin situ hybridizationの最適な解析条件が得られず、目的の候補遺伝子が見つかったものの同定までには至らず、実験材料の調整がメインとなった。その反面、当初2年目に調整する予定であった材料の一部も作製でき、解析に用いる材料(ベクター類に構築)も揃えられたため、1年目の分もカバーするように進めていく。具体的には、1年目に結果の出せなかったMIKC型MADS転写調節因子のDNA結合配列の決定、並びにin situ hybridization法による発現の時空間的解析について、1年目の条件検討を基に、早急に詳細な再解析を行う。前者については、In vitro発現系も用いて結合配列を決定する。さらにCmTCP1転写調節因子の発現誘導能を調べるため、当初計画していたメロンの培養細胞を用いた転写活性化能解析システム以外に、パーティクルボンバーメント法を用いた一過的発現解析で代用できる可能性も出てきたため、解析の時間短縮のために、同方法も検討する。さらに、同様の方法を用いて腋生分裂組織形成に関わる既知遺伝子のメロンのオーソログ遺伝子によるMIKC型MADS転写調節因子の遺伝子発現への影響や、MIKC型MADS転写調節因子が側枝形成遺伝子の発現を制御するか調べることで、MIKC型MADS転写調節因子と他の因子との関係性を明らかにする。2年目後半では、MIKC型MADS転写調節因子と相互作用する因子を明らかにするため、腋生分裂組織形成に関わる既知遺伝子や側枝形成に関わる遺伝子のメロンのオーソログ遺伝子や巻きひげから調製したRNAを基に作製したcDNAを用いて酵母Two-Hybrid法を行う。相互作用する新規遺伝子が見つかった場合は、その遺伝子の配列特性から機能を推測して最終年で適切な解析を行う。
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