2022 Fiscal Year Research-status Report
ORNi-PCR法によるリンゴ黒星病菌における防除剤耐性変異株の高速検出法の開発
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22K05644
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
清水 武史 弘前大学, 医学研究科, 助教 (90374818)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 黒星病 / リンゴ / ORNi-PCR / 一塩基変異 / CYP51A1 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンゴ黒星病は青森県の基幹産業であるリンゴ栽培に甚大な被害をもたらし、近年多発傾向にある。防除剤として、黒星病菌のCYP51A1遺伝子がコードする蛋白質が持つ脱メチル化活性の阻害剤(DMI剤)が用いられるが、同遺伝子の一塩基変異により複数のDMI剤耐性変異株が出現する。よって、防除剤散布に先立ち変異株の有無や変異塩基の特定が必要だが、現行の手法はこれらの判別に一~数ヶ月を要するため、より迅速な手法が求められている。 研究代表者らは、Oligoribonucleotide (ORN) interference-PCR(ORNi-PCR)法が様々な遺伝子の一塩基変異を迅速・簡便に特定できることを示してきた。本研究は、黒星病の早期防除法の開発に向けて、ORNi-PCRによるCYP51A1遺伝子の一塩基変異検出法を確立し、約2時間で変異株を特定できるシステムの構築を目的とする。 CYP51A1遺伝子は、DMI剤耐性を示す4種類の一塩基変異によるアミノ酸配列の変異型(Y133F、M141I、E206Q、G427R)を生じる。2022(令和4)年度は、野生型および各変異型を判別するORNi-PCR反応条件を検討した。その結果、野生型CYP51A1遺伝子の増幅をORNによって抑制し、各変異型のみ特異的に増幅するORNi-PCR反応条件を決定した。これにより、ORNi-PCR法によるCYP51A1遺伝子型の判別が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の研究計画に沿って、CYP51A1遺伝子変異を検出するORNi-PCR法の反応条件を決定できた。本年度は、培養した野生型および変異型黒星病菌からDNAを精製し、ORNi-PCRの鋳型とした。現在、リンゴ樹木よりサンプリングした黒星病罹病葉の病斑から直接DNAを抽出し、これを鋳型として同様の実験を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のリンゴ黒星病は、外見上一つの病斑でもシングルコロニーとは限らず、複数種の黒星病菌が混在している場合も多い。例えば、野生型とY133F型の混在、Y133F型とM141I型の混在などである。そこで、黒星病罹病葉の病斑より抽出したDNAを鋳型として、ORNi-PCR法を用いてこうした複数種の黒星病菌の存在を特定し、CYP51A1遺伝子型を判別できるか検討する。 また、より迅速にCYP51A1遺伝子型を判別するため、黒星病菌胞子そのままORNi-PCR反応液に添加して、CYP51A1遺伝子の変異型をORNi-PCRで検出可能か検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け、研究発表会の開催地を含む地域への行動制限などから、計上した旅費の使用が少額となったため。 次年度は研究発表の機会を増やし、その際に旅費を使用する予定である。
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