2022 Fiscal Year Research-status Report
植物種間で異なる恒常的防衛・誘導的防衛メカニズムの分子進化
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22K05645
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉本 貢一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00511263)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 化学防衛 / 植物-植食者相互作用 / 二次代謝 / Solanum lycopersicum / 野生種 / 生物多様性 / 食害誘導遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
食害誘導性化合物の精製のためジャスモン酸処理をしたトマト葉を500g収穫し、メタノール抽出物を得た。本抽出物を液液分画により脂溶性夾雑物を除去したのち、ODSカラムによる分画によって粗精製物を得た。粗生成物のLC-MS/MS解析から、候補化合物がジヒドロカフェー酸様構造を持つことが明らかになった。この結果から精密質量から計算した組成式よりもより確からしい構造を推定することができたが、NMRによる構造解析を行うには至らなかったため引き続き原料量を増やして精製を行う必要がある。 LC-MS/MSによる部分構造の解析から本化合物をより精度よく推定することができたため、その生合成に関わる遺伝子の探索を行った。2022年12月に類似化合物の生合成酵素遺伝子配列がトマトから単離され、その機能を生化学的に解析したプレプリント論文が一足先に発表されてしまった。当該論文では組換え酵素を用いた生化学的なin vitro解析のみを行っていたため、in vivoでどのような化合物を生合成するのかは明らかになっていない。特に本研究で目的とする推定化合物の材料は酵素反応に使われていなかったため、分からない。そこで当該論文で行われておらず、かつ本研究の目的化合物生合成酵素を明らかにする方法として、ゲノム編集トマトの作出によるin plantaでの遺伝子機能解明を行うこととする。プレプリントで発表された4遺伝子に加え、当該化合物から推測される生合成遺伝子1つを発見し、合計5遺伝子を候補遺伝子とした。各遺伝子のエクソン領域を認識し、かつ他の遺伝子とはお互いに認識しないgDNAを設計し、DNA合成の後にゲノム編集プラスミドにクローニングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食害誘導性化合物の精製のため、ジャスモン酸処理をしたトマト葉を500g収穫し、メタノール抽出物を得た。本抽出物を液液分画により脂溶性夾雑物を除去した。続いてODSカラムによるフラシュクロマトグラフィーによって粗精製物を得た。粗生成物のLC-MS/MS解析から、候補化合物がジヒドロカフェー酸様構造を持つことが明らかになり、精密質量から計算した組成式よりもより確からしい構造を推定することができた。一方でNMRによる構造解析を行うには至らなかったため、引き続き原料量を増やして精製を行う必要がある。 LC-MS/MSによる部分構造の解析から本化合物をより精度よく推定することができたため、その生合成に関わる遺伝子の探索を行った。ところが2022年12月に類似化合物の生合成酵素遺伝子配列がトマトから単離され、その機能を生化学的に解析したプレプリント論文が発表された(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.12.17.520863v1)。そのため私の研究では当該論文で行われていないin plantaでの機能解析にのみ注力することとし、類縁化合物を植物体内でどのようにして生合成し分けているのかを明らかにする。プレプリントで発表された4遺伝子に加え、当該化合物から推測される生合成遺伝子1つを発見し、合計5遺伝子を候補遺伝子とした。各遺伝子のエクソン領域を認識し、かつ他の遺伝子とはお互いに認識しないgDNAを設計し、DNA合成の後にゲノム編集プラスミドにクローニングした。このゲノム編集プラスミドを保有するアグロバクテリウムを作出し、トマト子葉片に感染する。
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Strategy for Future Research Activity |
食害誘導性化合物の大量精製を引き続き行う。前回の精製では500gの材料から始めたものの精製過程のロスによって十分量の化合物を得ることができなかったため、1kgのトマト葉を準備し、十分量の化合物が得られるようにする。また大学内にいるセミオートマチックのフラッシュクロマトグラフィー装置を保有する研究者に協力を仰ぎ、精製の効率化を図ることで手作業で失われていた操作間のロスなどを最小に抑えるよう工夫する。 2022年度に準備し始めたゲノム編集による生合成遺伝子の同定を行う。2023年度後半にはT0植物が得られるため、その中から5候補遺伝子の各ホモ系統を選び出しジャスモン酸処理によって目的化合物の蓄積が起こるかどうかを調査する。また複数遺伝子が同時に編集されることが期待できるため、当該化合物の生合成遺伝子が冗長であっても同定できると期待できる。各候補遺伝子の編集の程度と当該化合物の蓄積量の相関を見ることで真の生合成遺伝子を同定する。同時に植物種間および食害処理間でのトランスクリプトームを実施し、候補遺伝子の絞り込みを行う。栽培トマトと野生トマトにおける転写量の違いから、シスエレメント解析に供する遺伝子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
上記に示した2022年12月に発表されたプレプリントの情報を利用することで、本研究計画で行う予定であった発現解析の対象となる遺伝子の絞り込みがいち早く行えたものの、年度内のNGS解析には予算が不足していた。そのため本年中の旅費の残りおよび消耗品使用量を抑えることで次年度に十分量のNGS解析を行う分の次年度使用額が生じるように計画した。
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