2023 Fiscal Year Research-status Report
水稲の大規模生産地帯における斑点米カメムシ発生量の予測
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22K05646
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小路 晋作 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10447683)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アカスジカスミカメ / 斑点米 / 広域的害虫管理 / 畦畔 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,牧草地等の害虫発生源が存在しない水田景観におけるアカスジカスミカメ(アカスジ)の広域的管理法の確立を念頭におき,畦畔植生の評価に基づく本種の発生量予測モデルの構築を目的とする.昨年度の調査では,調査対象水田から半径100m圏内の畦畔について,食草の被覆面積と水田内のカメムシ密度との関係を分析したが,予測性の高いモデルは得られなかった. そこで計画2年度である今年度は,植生の評価法をさらに簡略化し,新潟県阿賀野市のコシヒカリ栽培水田において,水田から半径800m圏内に位置する畦畔の植生評価を行い,畦畔および水田内におけるカメムシ密度の予測を試みた.その結果,(1) 畦畔における成虫の発生量は,対象地点から400m圏内の食草(メヒシバ)占有面積を要因とするモデルにより最も良く説明された.また,(2) カメムシ密度に対し,対象地点近隣(50m圏内)における食草の面積率は正の影響を,周辺景観(400m圏内)に生育する食草の面積率は負の影響を及ぼしていた.これらの結果は,周辺景観に比して局所的な食草密度が高いことが,アカスジの密度増大の要因となる可能性を示唆している.言い換えると,畦畔の除草が徹底され食草の密度が低く抑えられた景観において,局所的に食草が繁茂する水田があった場合には,その地点においてアカスジの発生量は増加することになる.一方,周辺景観一帯において食草密度が高い条件下では,景観植生はアカスジ個体群の吸収源として作用することを意味している.このような傾向は,明瞭な発生源のない水稲生産地帯における本種の空間動態の特徴を表すものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画については,畦畔の植生評価法の検討(サブテーマ1)および周辺景観における畦畔植生とアカスジ発生量の関係(サブテーマ2)について計画通りに実施することができた.畦畔植生とアカスジ発生量に関する回帰モデルが得られ,明瞭な発生源のない水稲生産地帯における本種の空間動態の特徴が明らかになってきた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,2023年度に実施した野外調査を反復し,結果の再現性を検討する.また,場所を変えて畦畔植生とカメムシ密度を調査し,カメムシ発生量予測モデルの精度検証を行う.
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