2022 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜複合体標的型エフェクターの分子機能と標的宿主因子の機能解明
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22K05653
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松井 英譲 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (20598833)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Type III Effector / Plant immunity / Pseudomona syringae |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「Effector Jの分子機能の同定と、標的宿主因子の植物免疫における機能解明」であり、本年度は、1.Effector Jと細胞膜複合体関連因子の相互作用様式の解明と、3.Effector Jの分子機能の解明に取り組んだ。Effector Jは、細胞膜局在を示すエフェクターであり、細胞膜上のタンパク質を標的とすると考えられた。これまでの解析から、Effector Jの相互作用因子候補として、機能未知のLRR-RLKならびに分子機能未知のタンパク質の同定に成功している。これら候補因子に着目し、共免疫沈降法、BiFCによる相互作用様式の解明を進めている。3.として、Effector Jのシロイヌナズナへの応答を解析した。Effector Jはシロイヌナズナに防御応答を誘導することが明らかとなった。そこで、Effector J過剰発現体を作出したところ、過剰発現体は矮性の表現型を示した。また、サリチル酸のマーカー遺伝子PR1の発現を解析したところ、Effector J過剰発現体において、PR1発現が野生型に比べて高まることが明らかとなった。これらの結果から、Effector Jがシロイヌナズナに対して非病原力因子として機能すると考えている。これまでに、Laflamme et al., 2020において、シロイヌナズナCol-0が認識するType III Effector(T3E)の大規模解析が行われた。これにより、多くのT3Eの受容体が明らかにされたが、Effector Jを認識する受容体は明らかになっていなかった。そこで、Effector J過剰発現体の形質を利用したスクリーニングを試みることで、受容体ならびに制御する免疫機構の解明を進める計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断している。理由として、1)Effector Jが標的とする候補の同定に成功した点、および2)シロイヌナズナに対するEffector Jの役割が明らかになった点が挙げられる。1つ目として、Effector Jの標的因子として、高い確率で同一のLRR-RLKが単離されることが明らかとなった。Effector Jの細胞内局在は細胞膜であることが明らかとなっている。つまり、細胞膜上に局在するLRR-RLK複合体を標的としている可能性が推察された。そこで、このLRR-RLKのクローニングに成功したことから、in plantaでの相互作用検証の準備を進めている。その他に、Effector Jの標的因子として分子機能未知なタンパク質が2つ同定され、2つはホモログであった。タンパク質の構造が保存されていたことから、物理的に相互作用する可能性は高いと考え、これらEffector Jとの物理的な相互作用の検証実験を進めている。2つ目として、Effector JがPtaの非宿主であるシロイヌナズナに与える影響について解析を進めたところ、Effector JによってETIが引き起こされることを見出した。さらに、Effector J過剰発現体では、PR1遺伝子発現が高っており、免疫応答が活性化するため、矮性の表現型を示すことが明らかとなった。一般に、avr遺伝子を過剰発現させた場合には致死に至ることが知られているが、Effector Jでは致死ではなく、次世代を取得することが可能であった。現在、より詳細な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Effector Jの物理的な標的因子との相互作用の解明を進めるにあたり、BiFCならびに共免疫沈降法を予定している。膜タンパク質とエフェクターの物理的な相互作用の解析は技術的なハードルが高いことから、異なる方法(Yeast two hybrid)などを行うことも計画している。随時解析を進めることを計画している。 本年度は、今回同定した植物免疫関連因子の分子機能の理解に向けて、VIGSを利用したサイレンシング個体の作出に取り組む。そして、サイレンシング個体が得られた場合、PTI応答の検証を試みる。一方で、同定したベンサミアナタバコのLRR-RLKおよび分子機能未知のタンパク質は、Nbゲノム中に多数のホモログが存在していることから、サイレンシングだけではなく、Crisprによる変異体作出も視野にいれる。 Laflamme et al., 2020で大規模なeffectorとエフェクターを認識する抵抗性遺伝子の対応関係が報告された。しかしながら、Effector Jを認識する抵抗性遺伝子は明らかになっていない。Effector J過剰発現個体が示す矮性形質に着目した解析を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度は、形質転換体の作出および選抜など、植物体の表現型解析を中心としたエフェクターの分子機能の解明を進めたため、当初予定していた生化学的な標的因子との相互作用実験にまで至っていない。当該年度は、物理的なタンパク質間相互作用を検証するため、生化学的な解析(co-immuneprecipitation)およびBiFCによる相互作用の検証を行う。前年度分のこれらに必要な生化学試薬、遺伝子実験試薬の購入を予定している。
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