2022 Fiscal Year Research-status Report
ネコブセンチュウゲノムの可塑性とサツマイモ病原性レースとの関連
Project/Area Number |
22K05660
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
浅水 恵理香 龍谷大学, 農学部, 教授 (00370924)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白澤 健太 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 主任研究員 (60527026)
野中 聡子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50580825)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ネコブセンチュウゲノム解読 / サツマイモ形質転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物寄生性線虫は、世界的に農業の重要害虫である。中でもネコブセンチュウとシストセンチュウによる被害は甚大であり、毎年作物収穫の約14%がこれらの線虫害によって失われている。対策は、殺線虫剤や土壌薫蒸剤を使用する化学的防除に頼られており、環境への悪影響が懸念されている。トマトなど一部の作物を除いて線虫抵抗性品種の育成は進んでおらず、安全かつ持続的な生物的防除方法を確立するには、線虫と植物の相互作用メカニズムの包括的理解が、急務となっている。本研究では、国内のサツマイモ圃場で被害の多いサツマイモネコブセンチュウに着目し、宿主サツマイモとの相互作用に関わる遺伝子群を明らかにすることを目的としている。 我々は先行研究において、サツマイモネコブセンチュウゲノムには感染に関わる遺伝子が集積する「ホットスポット」が存在することを示した。この領域のハプロタイプを明らかにするため、サツマイモネコブセンチュウ2系統について、PacBio HiFiロングリードによるゲノム解読を行った。アセンブルの結果、それぞれ約150Mbのホモ接合領域の他に、80Mbのヘテロ接合領域が見出された。これは、予測ゲノムサイズとほぼ一致してより、真の染色体構造に近いアセンブルが得られたと考えられる。 線虫病原レースであるSP (Sweet Potato) レースと宿主であるサツマイモとの関連について、2022年度には遺伝子機能解析に向けたサツマイモ形質転換系の立ち上げを行った。Ohtaniら (1996) の手法を参考にして、SPレース検定用の5品種ならびに、形質転換好適品種 (高系14号系'鳴門金時')を材料に用いて、無菌培養した茎から茎頂を切り出し、カルス誘導を行った。これらのカルスを用いて、アグロバクテリウム法による形質転換を進める計画である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サツマイモネコブセンチュウのゲノム解読について、感染関連SNPが集積するゲノム領域の遺伝子型が異なる2系統を選び、ロングリードによる配列蓄積を行った。アセンブルまで完成させることができた。 サツマイモ形質転換による遺伝子機能解析について、準備を進めた。サツマイモ5品種に加えて標準品種の無菌培養とカルス誘導を行い、カルスの増殖を進めている。また、サツマイモ形質転換用ベクターを入手し、コンストラクトを進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
サツマイモネコブセンチュウのゲノム解読については、ハプロタイプの明確化、染色体レベルでのアセンブル構築、感染関連SNP蓄積領域の詳細な構造解析を実施する。 相互作用に関わる遺伝子の解析では、異なる病原レースに応答するサツマイモ遺伝子群について発現時期、発現部位の特定、発現抑制による感染への影響を調べる計画である。
|
Causes of Carryover |
植物形質転換用ベクターの無償分譲を受けることができ、節約が可能となった。次年度以降の分子生物学実験の試薬に充当していく計画である。
|