2023 Fiscal Year Research-status Report
昆虫寄生菌の経口感染病理と消化管デリバリーシステム
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22K05668
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
相内 大吾 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 准教授 (50552783)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 昆虫寄生菌 / 経口感染 / 農業害虫 / 衛生害虫 / 貯穀害虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫寄生菌Beauveria pseudobassianaの代謝産物の中からハマダラカに対して経口毒性を示す化合物を探索すべく、RNAseqデータをパスウェイ解析したところ、1種類のマイコトキシンを同定するに至った。B. pseudobassianaのGFP組換え系統を作出し、消化管からの感染動態を観察したところ、分生子が発芽し、菌糸を伸長して血体腔に侵入する様子が観察された。菌体は前・中・後腸で散見され、特に前腸の頭部付近に多くの菌体が認められた。また、ハマダラカとヤブカへ高い経口毒性を示す菌株を用いて、亜致死効果を評価したところ、宿主探索・吸血・産卵行動が変化することが明らかとなった。昆虫寄生菌内生トウモロコシを摂食したアワノメイガでは、2齢幼虫に対して致死効果が認められたものの、老齢幼虫では効果がなかった。一方、トウモロコシの摂食量を比較すると老齢幼虫で摂食量が低下する傾向が見られた。昆虫寄生菌内生キュウリ上で飼育したアブラムシでは、直接菌を接種していない葉上においても高い致死率が認められ、加えて産子数が40%程度減少することが明らかとなった。擬似餌を供試したナガシンクイムシでは、致死効果が認められたものの、半数致死日数が40日前後と時間を要した。擬似餌内での菌の生存期間を評価したが、2ヶ月の間約1000000cfu/gという高い密度を維持していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で対象としている4害虫それぞれの試験では、進展にばらつきがあるものの、順調に実験は進んでおり、概ね問題はないものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
パスウェイ解析で判明した経口毒性物質の蓄積量を評価し、実際に単独で経口投与した際の致死効果を検証する。アワノメイガに対する昆虫寄生菌内生トウモロコシの投与試験では、より高い経口病原性を示し、高い内生能力を有する菌株の探索を実施する。また、アワノメイガに加え、昨今甚大な被害を世界中で引き起こしているツマジロクサヨトウの導入も検討する。アブラムシに対するキュウリ内生昆虫寄生菌の試験では、菌内生キュウリ上でのアブラムシの吸汁行動の変化を評価するとともに、菌感染アブラムシがキュウリに菌を媒介する可能性について検討する。また、植物体内の菌がどのようにして外界のアブラムシに感染するのか、GFPやFISH法などの視覚化技術を駆使して観察する。ナガシンクイムシでは、擬似餌の接触量を増やすため補助剤の添加を検討し、より高い致死率を実現する。
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Causes of Carryover |
日程の関係で予定していた国際学会に出席することができなかった。この残額は効果的に研究成果発表のため使用する。
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