2023 Fiscal Year Research-status Report
モノソミーカイコ出現メカニズム解明と常染色体遺伝子量補正の検証
Project/Area Number |
22K05669
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
佐原 健 岩手大学, 農学部, 教授 (30241368)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | モノソミー / カイコ / 第2染色体 / qPCR / BAC / FISH |
Outline of Annual Research Achievements |
限性黄繭系統Sy雌に黒縞系統re9雄を交配させた越年卵から2022年春蚕期に「遅れ小蚕」の中から、第2染色体上の23プライマーによるreal time qPCR系を用いて選抜したSyr03(黒縞・非黄血)モノソミー雄にp50(形蚕・非黄血)雌を交配した。3系統のモノソミー後代のうち、314雄にp53(姫蚕・黄血)雌を交配して得た314-03、-04、06モノソミー子孫系統に本年度、p50を戻し交配して次世代(F4モノソミー世代)を得た。これらには形蚕・黄血(正常候補)と形蚕・非黄血(モノソミー候補)が分離し、qPCR解析を行った。その結果、モノソミー判定された個体の他、後述する1612次世代(F3モノソミー世代)と同様に双方の候補に部分的なトリソミーや欠失を有すると考えられる個体が検出された。よって、この世代からもそれぞれの雌雄より染色体標本を作製した。この標本を用いたFISH解析を来年度に予定している。 本年度、1612モノソミー次世代から作製した染色体標本の第2染色体に対するFISHを行った。昨年のqPCR結果が、部分的な欠失と判定された正常候補(形蚕・黄血)3個体の欠失はFISHによって同定できなかった。ただし、1個体は中央部に大きな欠失が認められ残存部位は融合している可能性が示唆された。FISHの結果、モノソミー候補(姫蚕・黄血)のうち、7個体の第2染色体はユニバレントを持つモノソミーと判断された。その他、ユニバレントに加えて、リング状を呈する第2染色体中央部分が認められる個体が検出された。また、前端部が欠失した第2染色体部分対合個体も認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、qPCRモノソミー判定を行った結果、モノソミーと部分モノソミーが1612の次世代(F3)に認められた。これら個体の染色体標本に対して第2染色体BACをプローブとしたFISHを行い、qPCR判定結果にほぼ即したデータが得られた。FISHで検出できない小さな欠失に関しては、本研究とは別途解析が必要と考えられる。これまでの研究では、その表現形質、順調な成長、体サイズならびに生殖能力から判断して2倍体であると疑っていなかった個体にも、F3世代には想定外の染色体異常が発見された。また、形質上はモノソミー候補と判定され、出現当代となるF1世代と同様の「遅れ小蚕」形質を示す個体の他に、正常と同様の体サイズにもかかわらず、qPCRとFISHの双方の結果とも、モノソミーだと確定した個体を見出した。モノソミーの生存や成長に関してこれらの事実を考慮した検討が必要と判明した。 本年度は、さらに別系統のモノソミーF4世代を飼育し、qPCR検定を行った。これら個体の染色体標本を作製したので、F4に関する染色体異常に関する研究に発展できる。 以上、今年度計画の研究内容を実施できたためおおむね順調との評価を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、申請者らが発見したモノソミーカイコに関して、その出現メカニズムを明らかにすることにある。出現メカニズム解明には、BAC-FISHにより細胞遺伝学的に解明するとともに、モノソミー個体の安定的な獲得を目指す必要がある。2年間の研究でモノソミーを産出する雌親であるSyのγ線による異常染色体の関与する染色体を特定と、1本しかない第2染色体の一部分が重複することによりモノソミー性が失われる(部分モノソミー)ことを明らかにできた。今後、どのようなメカニズムで染色体の部分復帰が生ずるのかまた、復帰部分ごとしたので、その変異構成をさらに解析し、出現メカニズムを推定する。さらに、獲得したモノソミー個体を用いてカイコ第2染色体遺伝子の量的補正の有無を検証することも目的のひとつである。そのためには実験に用いる十分なモノソミー個体の確保が必須となる。これは、系統維持によるモノソミー個体の選抜と確保の障害となる。そのため、系統維持によるモノソミー個体数確保とともに本年度は、出現当代(F1)の数を確保することも視野に入れる。引き続きqPCR検定による判別法を活用して研究を進める。
|
Causes of Carryover |
一昨年度コロナ禍により打ち合わせがメールやオンラインに限られたことで生じた繰り越し金のうち、昨年度に半額を使用した。本年度、全額解消見込みである。
|
Research Products
(5 results)