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2022 Fiscal Year Research-status Report

Interspecies chemical communication in social regulation of a gall-forming social aphid

Research Project

Project/Area Number 22K05671
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

柴尾 晴信  慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問研究員 (90401207)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 松山 茂  筑波大学, 生命環境系, 講師 (30239131)
Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywords社会性アブラムシ / 植物ゴール / ホメオスタシス / 階級分化 / 季節多型
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、ハクウンボクハナフシアブラムシのゴールにおいて、安定した巣内環境が実現される仕組みを理解するために、ゴール自身の環境調節機能に焦点を当て、特にゴールの蒸散作用による温度調節の有無について明らかにした。6月から9月にかけて野外で外気温およびゴール・宿主植物の葉の表面温度を測定した。その結果、ゴールは葉と同様に表面温度が外気温よりも2-5℃程度低く、ゴールには蒸散による気化熱で温度を下げる機能があることがわかった。そこで、ゴールまたは葉が付いた枝を切り取って実験室に持ち帰り、色水で満たした細いシリコンチューブ(直径1mm)に繋いだ状態で、一定時間内のチューブ内の液量の減少を観察することにより、ゴールと葉の蒸散量の測定を試みた。ゴール・葉とも、まず無処理の状態で蒸散量を測定した。次に、葉については表側または裏側の気孔をワセリンで塞いで蒸散量を測定した後、表側と裏側の気孔をともに塞いで蒸散量を測定した。ゴールについては先に下面に開いた小孔を全て塞いで蒸散量を測定してから、上半部または下半部の気孔を塞いで蒸散量を測定し、その後に上半部および下半部の気孔をともに塞いで蒸散量を測定した。最後に、ゴール・葉を取り除いて枝のみの蒸散量を測定した。処理間の蒸散量の差から、ゴールの上半部と下半部からの蒸散量や葉の表側と裏側からの蒸散量を求めた。画像計測ソフトでゴール・葉の表面積を算出し、単位面積当たりの1分間の蒸散量を算出した。その結果、ゴールの蒸散量は葉よりも多いこと、葉では表側よりも裏側の方が蒸散量が多いが、ゴールでは上半部も下半部も蒸散量は大差ないことがわかった。また、ゴール下面に開いた小孔を全て塞いで、小孔を通じた巣内外のガス交換を阻害したところ、ゴール全体の蒸散量が増大することもわかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究では、本種のゴール1個や宿主植物の葉1枚でもリアルタイムに蒸散の様子が観察でき、興味の対象としている部位の蒸散量を正確に測定できる実験系の構築に成功した。本研究の重要な進展は、植物組織であるアブラムシのゴールが、蒸散による気化熱で巣の温度を下げる機能を有することを実験的に確かめることができたことであり、ゴールが適応的な構造物である強い証拠を得ることができた。本種のゴールは複雑なサンゴ状の巣に成長し、ゴール上部に開口部がなく、ガス交換が起こりにくい構造になっている。興味深いことに、今回の実験において、ゴール下面に開いた小孔を全て塞ぐことにより、小孔を通じた巣内外のガス交換を阻害したところ、ゴール全体の蒸散量の増大が観察された。このことは、気孔が、ゴールの外表面だけでなく、内表面にも存在しており、ゴール内と大気との間で二酸化炭素・酸素のガス交換の役割を果たしている可能性を示唆している。

Strategy for Future Research Activity

今回は本種のゴールが蒸散作用による気化熱で巣の温度を調節している証拠を示すことができた。しかし実際には外気温とゴールの外表面温度しか測定していないため、今後はゴール内部の温度を測定・確認する必要がある。また、ゴールの蒸散作用による巣内温度の調節が、気温や湿度、時間、アブラムシ密度などの環境要因とどのような関係があるのかを明らかにする。
本種のゴールが巣内環境を調節する仕組みを理解するためには、蒸散作用による温度調節以外の役割についても知る必要がある。本種のゴールは複雑な巣構造を持っているため、ゴール下面に開いた小孔だけでは二酸化炭素・酸素のガス交換は不十分であると考えられる。ゴールにおける気孔の数や分布、開閉の有無を調べ、気孔がゴールのガス交換の起こりにくい部分に集中して分布していることや、ゴールの外表面だけでなく、内表面にも存在し機能していることを確認することで、気孔がゴール内と大気との間でガス交換の役割を果たしていることを明らかにする。
ゴール内の安定した巣環境でアブラムシが季節の到来を予知して定住型から分散型のモルフの生産に切り替えるメカニズムについて明らかにする。季節の進行に伴うゴール内の光強度や温度、ガス濃度、アブラムシ個体数密度などの微変動を定量化する。近接リモートセンシング手法により、季節変動に伴う野外ゴールの生理状態や環境調節能力の変化をモニタしながら、実験室で巣環境の微変動を再現してアブラムシの表現型(兵隊階級/無翅モルフ/有翅モルフ)の切り替えが起こるかを観察する。

Causes of Carryover

新型コロナウイルスの感染リスクを避けるため、予定していたアブラムシの現地調査の回数を減らしたために次年度使用額が生じた。この次年度使用額は次年度の配分額と合わせて旅費や物品、試薬の購入に使用する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2023 2022

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Linoleic acid as corpse recognition signal in a social aphid2022

    • Author(s)
      Harunobu Shibao, Mayako Kutsukake, Shigeru Matsuyama, Takema Fukatsu
    • Journal Title

      Zoological Letters

      Volume: 8 Pages: 1-10

    • DOI

      10.1186/s40851-021-00184-w

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 社会性アブラムシが宿主植物上に誘導するゴールは光合成能力を持つのか?2023

    • Author(s)
      柴尾 晴信(慶応大・自然セ)・植松 圭吾(慶応大・自然セ)・沓掛 磨也子(産総研・生物プロセス)・深津 武馬(産総研・生物プロセス)・松山 茂(筑波大・生命環境)
    • Organizer
      日本応用動物昆虫学会 第67回大会(2023年3月15日)ポスター発表

URL: 

Published: 2023-12-25  

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