2022 Fiscal Year Research-status Report
タバココナジラミ菌細胞を用いた新たな共生機能解析技術の開発
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22K05672
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
藤原 亜希子 群馬大学, 食健康科学教育研究センター, 講師 (90726720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 和代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (80835116)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | タバココナジラミ / 共生細菌 / 菌細胞 / 細胞培養 / 初代培養 / 吸汁性農業害虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸汁性農業害虫の中には、共生細菌を収納するための“菌細胞”という特殊な共生器官を体内に持つものが多く存在する。この菌細胞共生系は、宿主昆虫と共生細菌が互いに不足する栄養素を補い合う生存・繁殖に必須のシステムであることから、生物学のみならず農学分野からも注目されている。しかし、その特異性ゆえに菌細胞共生系で使用できる簡便かつ効果的な遺伝子操作技術が不足しており、分子機構の多くは未解明である。そこで本課題では、「(I)タバココナジラミ菌細胞の長期安定維持手法の確立」、「(II)タバココナジラミ体細胞由来培養細胞株の樹立」、「(III)タバココナジラミ菌細胞由来培養細胞株の樹立」、「(IV)ハイコンテント解析使用条件の最適化」の4つの段階的な研究課題を設定して、タバココナジラミ菌細胞を用いた共生関連遺伝子の機能解析手法の開発を目指す。 初年度、課題(I)ではまず、入手しやすい市販培養液のGrace’s insect medium、IPL-41を候補としベース培養液の検討を行った。その結果、IPL-41では培養後の時間経過に伴って細胞膜が維持されなくなり、細胞の形が崩れることが判明したため、Graceを選定した。続いて、FBS濃度の検討を行った結果、濃度を20%に増やすことで、細胞膜が良好に維持され、菌細胞の色が濃い (共生細菌が生存している) 状態で長期維持でき、培養後の生存率向上に成功した。さらに、グルタミンとPVP(Polyvinylpyrrolidone K90) の添加についても検討を行った結果、Grace 20F + PVP 1mg/ml + glutamine 20mM条件において、培養7日後の菌細胞生存率約8割 (78.54 ± 2.129 %) が達成された。 さらに、課題(II)では、タバココナジラミ卵を大量に回収しホモジナイズした状態から初代培養を開始した条件において、9ヶ月以上培養液中にて生存している状態 (位相差顕微鏡で細胞外観等の様子から確認)を維持しているサンプルが存在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(I)においては菌細胞生存率約8割を達成する培養条件の確立に成功し、課題(II)では、タバココナジラミ卵を大量に回収しホモジナイズした状態から初代培養を開始した条件において、9ヶ月以上培養液中にて生存している状態を維持するサンプルの存在を確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の課題(1)の遂行によって得られた長期培養条件を使用し、課題(IV)の段階へ進む。まずは、タバココナジラミ若齢メス成虫から回収した菌細胞を用いて、96wellプレート上での機能解析実験を行う最適条件の検討を行う(この時の菌細胞回収方法についても、初年度に改良したプロトコールを用いる)。課題(II)については上述の条件での初代培養を継続するとともに、課題(III)遂行のために、菌細胞・体細胞の共培養などを追加改善策として試みることも計画している。
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Causes of Carryover |
初年度においては、「(I)タバココナジラミ菌細胞の長期安定維持手法の確立」課題遂行によって使用した消耗品消費額が当初予定額より少なかった。また、次年度に遂行する「(II)タバココナジラミ体細胞由来培養細胞株の樹立」「(III)タバココナジラミ菌細胞由来培養細胞株の樹立」については今年度の状況を考慮して、追加改善策(菌細胞・体細胞共培養など)を試みることも計画しているため、次年度の消耗品、実験試薬の購入に当てるために繰り越した。
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