2022 Fiscal Year Research-status Report
ウンカ類とその食性に関与する共生真菌の関係に関する基礎研究
Project/Area Number |
22K05685
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
矢代 敏久 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 主任研究員 (30846712)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真田 幸代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 研究領域長補佐 (80533140)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ウンカ / 食性 / 共生真菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の分類群(例えば、科レベル)において、食性の多様化に共生菌類がどのように関与しているのかを網羅的に調べることで、昆虫と菌類の新たな関係を見出すことを目的とした本研究課題では、ウンカ科昆虫と少なくとも一部の種のウンカの食性への関与が知られている共生真菌に着目し、(1)網羅的なウンカ科各種の食性解析、(2)網羅的なウンカ科及びその共生真菌の分子系統解析、(3)ウンカ科の種間での共生真菌の入れ替え実験によって、ウンカ科昆虫における食性の多様化への共生真菌の関与の解明を目指す。 (1)として、ウンカ科各種の腸内植物DNAをメタバーコーディング解析に用いるウンカの採集を本州、九州、沖縄で行った。また、上記メタバーコーディング解析によって寄主植物をして推定された植物種を餌とする飼育実験のための植物体や種子の収集も進めている。 (2)として、ウンカ科各種のDNA及びその共生真菌のDNAを抽出し、ウンカ科ではミトコンドリア遺伝子COI領域、共生真菌では18SリボソームRNA遺伝子をターゲットにPCRを行い、シーケンスにより塩基配列決定を行うための、ウンカの採集を本州、九州、沖縄で行った。DNA抽出、PCR、シーケンス作業を進めている。 (3)として、実験のために飼育していたセジロウンカモドキ集団は九州で採集された1集団のみだったので、石垣島で新たにセジロウンカモドキ集団を採集し累代飼育をはじめ、実験に取り掛かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、(1)網羅的なウンカ科各種の食性解析、(2)網羅的なウンカ科及びその共生真菌の分子系統解析、(3)ウンカ科の種間での共生真菌の入れ替え実験で構成されており、「おおむね順調に進展している。」とした理由は以下の通りである。 (1)として、ウンカ科各種の腸内植物DNAのメタバーコーディング解析及び飼育実験のためのウンカや植物の採集を本州、九州、沖縄で行い、十分なサンプル数が集まりつつある。 (2)として、ウンカ科各種のDNA及びその共生真菌のDNAを抽出し、ウンカ科ではミトコンドリア遺伝子COI領域、共生真菌では18SリボソームRNA遺伝子をターゲットにPCRを行い、シーケンスにより塩基配列決定を行うためのウンカの採集を本州、九州、沖縄で行い、十分なサンプル数が集まりつつある。また、解析も開始した。 (3)として、ウンカ種間での共生真菌の入れ替え実験のために必要な累代飼育ウンカ集団を確保し、実験を開始した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)ウンカ科各種を日本各地で追加採集し、得られたウンカ科各種の腸内の植物DNAをメタバーコーディング解析によって網羅的に解析し、寄主植物を推定する。さらに、ウンカ科各種について、メタバーコーディング解析によって寄主植物として推定された植物種を餌として飼育し、生活史を回すことが可能か確認する。 (2)ウンカ科各種のDNA及びその共生真菌のDNAを抽出し、ウンカ科ではミトコンドリア遺伝子COI領域、共生真菌では18SリボソームRNA遺伝子をターゲットにPCRを行い、シーケンスにより塩基配列決定を行う。得られた塩基配列データに基づき、ウンカ科各種及びその共生真菌の網羅的な分子系統解析を行ない、食性解析の結果と併せて、ウンカ科昆虫における食性への共生真菌の関与を推定する。 (3)イネウンカ類ではないが過去に突発的なイネへの加害による被害が報告されているセジロウンカモドキの集団を、同一のケージでイネウンカ類のいずれか1種の集団と同居させ累代飼育する。餌としては、セジロウンカモドキの累代飼育に適しているコムギと、通常は累代飼育に適していないイネの両方を常時与える。上記方法による共生真菌の塩基配列決定により、セジロウンカモドキにイネウンカ類由来の共生真菌が水平伝播したかどうかを確認する。イネウンカ類由来の共生真菌がセジロウンカモドキに水平伝播していれば、イネへの産卵数とその後の卵の孵化率及び幼虫の生存率を調べ、イネに対する餌としての利用能力の向上を検証する。
|
Causes of Carryover |
実験や解析に使うサンプルであるウンカや植物の採集を最優先に研究を進めたため、メタバーコーディング解析ができなかったので、次年度に行う。
|