2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of new evaluation methods for environment and biodiversity using index species in grassland and marsh ecosystems
Project/Area Number |
22K05706
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大窪 久美子 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90250167)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 草原・湿原生態系 / 環境評価 / 指標種 / 生物多様性 / 保全生態学 / 霧ヶ峰 / 阿蘇くじゅう国立公園 / 草原性植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は草原・湿原生態系において、蛾類等の新規指標種を用いることにより、従来よりも的確で、かつ詳細な環境評価および生物多様性評価の手法を開発することである。 今年度は特に「くじゅう地区」の蛾類群集の調査から草原および湿生草原、落葉広葉樹林(クヌギ林)、低木林(ハギ類)などの植生環境の指標となる種群を認めることができた。また、「くじゅう地区」において蛾類群集の多様性が特に高い調査地区はオサムシ科群集と同様で、本地区は草原・湿原群落の植物の種多様性においても顕著に高かった。 一方、周辺の草原群落がハギ類の低木が優占する地区では蛾類群集の多様性は低かった。本地区は野焼きが継続されているが、刈り取りは部分的にしか実施されず、過去の過放牧の影響もあり、草原群落の種多様性が低いことが蛾類群集に影響したと考えられた。しかしながら、隣接地には種多様性が高い草原群落や希少植物を含む湿原群落も存在するため、これら植生環境と蛾類群集との関係性について解明するため今後さらなる調査が必要と考えられた。 さらに草原・湿原群落の特徴としては季節的な植物種の棲み分けが知られているが、個々の群落型の詳しい知見はない。そのため、環境および生物多様性評価を行うためには盛夏だけでなく、春季から初夏の群落の組成や構造等の特性を明らかにする必要がある。今年度は春季から初夏の群落調査についても実施した結果、湿原群落の指標となる湿性種群としてはサクラソウやサワオグルマ等が認められた。また、半自然草原群落(ネザサ・トダシバ群落・ススキ群落など)の指標となる乾性種群としてはキスミレやフモトスミレ等が確認された。最も多様性の高い群落は春植物のサクラソウやサワオグルマ が出現する湿生草原であった。ネザサやススキの優占する半自然草原は春植物としてキスミレの出現が特徴的で野焼きも実施の場所が多いが、植生遷移が進行した群落だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の行動制限もあり、遠方への調査移動が難しい期間もあったため、進捗にやや遅れが生じてしまった。また新規に湿原の調査地の調査許可を得るため、地権者等への確認に時間がかかってしまったこともあり、これも進捗に影響を与えた。また、2月から3月に天候が悪く、野焼きの実施が4月まで遅れたため、年度末の調査が実施できない地区もあった。多数の理由で調査の実施が遅延している部分もあるが、現在では環境省から調査の許可が得られたため、今後はスムーズに研究を進めることができる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について大きな変更は無いが、再び新型コロナウイルスの感染拡大によって県外移動が厳しくなることも予定される。できるかぎり今後も新型コロナウイルスへの対応を万全にとりながら、本研究を推進していく所存である。
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Causes of Carryover |
2月から3月に天候が悪く、野焼きの実施が遅れたため、予定していた年度末の調査に行くことができなかった。そのため、次年度使用額が生じてしまった。次年度の4月には無事に野焼きが実施されたので、今後は翌年度分と合わせて使用する計画である。
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