2023 Fiscal Year Research-status Report
松くい虫被害を受けた海岸林の樹種転換における保護樹による環境改善効果
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22K05708
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山中 啓介 鳥取大学, 農学部, 准教授 (60555431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩永 史子 鳥取大学, 農学部, 講師 (50548683)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 保護樹 / 広葉樹植栽 / 松くい虫被害跡地 / 気温逓減効果 / 海岸砂丘地 / 上層木による被陰 / 侵入広葉樹 / 鳥散布種子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年6~10月,保護樹に想定したクロマツの南北方向に地際から20~100cmまで20cm毎および周辺の裸地に測点を設定した。そして,降雨後の地上部の気温,地温,土壌含水率を測定した。気温および地温は裸地と比較してクロマツ保護樹周辺で低く,クロマツ保護樹に近づくにしたがって低下する傾向が認められた。とくに北側で顕著な傾向がみられ,クロマツ保護樹の被陰による効果であると考えられた。一方,土壌含水率は保護樹からの距離と関連は認められなかった。 鳥取県鳥取市福部町の海岸砂丘地において3成長期が経過したクロマツを保護樹とし,2023年3月にエノキ,トベラ,クロマツを保護樹1本当たり南北方向にそれぞれ1本ずつ植栽した。2023年3~10月,植栽木の枯損および成長の状況を調査した。ほとんどの樹種で保護樹から10㎝の植栽木の累積枯損率が10~50%と最も低く,保護樹からの距離が遠くなるほど植栽木の枯損率が高くなった。 鳥取県東伯郡湯梨浜町において,クロマツ上層木(保護樹)の林床に植栽されたスダジイとクロマツについて,植栽から6成長期目の2022年5~6月に植栽木の毎木調査を実施した。また,2022年9月~2023年9月に環境要因を計測した。スダジイ生存木の多くはクロマツ上層木の樹冠下,またはクロマツ上層木の陰が掛かる部分に認められた。また,気温,地温および照度はいずれもスダジイ生存点の方が枯損点より低く,体積含水率は高い傾向がみられた。 海岸砂丘地の松くい虫被害跡地に残存している上層木の林床において,侵入広葉樹の現状と盛夏前後の個体数の変化を調査した。鳥散布種子であるエノキ,アカメガシワ,ネズミモチ,マサキといった樹種が多く確認された。上層木は保護樹としての役割を持つが,鳥によって種子が散布される際に必要な止まり木にもなるため,下層木の進入にも寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに設定した調査について,地権者等の了解が得られて順調に設定することができた。また,コロナ関連の規制も解除され,調査が順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
2022,2023年の調査で保護樹によって地温,気温の上昇が抑えられることが明かになった。2024年度は保護樹になるクロマツ大苗と植栽木を同時に植栽し,保護樹を活用した海岸林造成の実用化も見据えながら,植栽木の状況,環境要因について調査を行う。また,広葉樹の乾燥耐性について生理学的な見地からの解析を行う。
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Causes of Carryover |
計測機器の入荷が遅れる(年度をまたぐ)可能性が有ることから,機器購入を次年度に行うこととした。
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