2023 Fiscal Year Research-status Report
植物区系分布境界の島嶼地域における伝統的焼畑農耕と景観変遷の解明
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22K05715
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| Research Institution | Nihon University |
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Principal Investigator |
江口 誠一 日本大学, 文理学部, 教授 (00301789)
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| Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 景観変遷 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鹿児島県内の甑島列島に位置する薩摩川内市の中甑島と下甑島、および奄美群島に位置する徳之島の徳之島町、天城町、伊仙町、沖永良部島の和泊町と知名町にて現地調査をおこなった。焼畑とその周辺の昭和期から現在の植生については、甑島地域の大部分が傾斜地でかつてはサツマイモや小麦を栽培する段々畑であったが、現在は放棄され一部の火入れを伴うカノコユリ栽培地以外ではススキなどの草地が広がっており、地下水位の高い区域ではダンチクが分布していた。一方、奄美地域では水田域であった区域も含め、広い範囲の農地でサトウキビかジャガイモの畑として利用され、近年まで前者の多くで火入れが為されていた。昭和期以前の地域景観の復原については、甑島地域で中甑島北部浮墨山東山麓と下甑島北部鳥ノ巣展望所横の2地点で地形・地質調査を進め、それぞれ地表より25センチメートルの暗褐色層、50センチメートルの褐色層、以下基盤礫含む層と、地表より20センチメートルの暗褐色層、以下褐色層が観察され、10センチメートルごとの堆積物サンプルを採取した。奄美地域でも、徳之島の伊仙町小島と沖永良部島の知名町田皆、それぞれ1地点ずつAT火山灰層の露頭で同様の現地調査をおこない、地域火山起源とみられる火山灰層を含む地層観察とともに分析用サンプルの採取をおこなった。また、昨年度採取された大隅群島の三島村竹島の堆積物について、放射性炭素年代測定をおこなった結果、腐植層の最下部で1524～1399年前、微粒炭が最も多く含まれる層準では993～924年前の値が得られた。地元住民との情報交換については、博物館・資料館やその関連施設の担当者の方などより、過去の生活と植生との関係についての情報とともに、調査地点選定についてのアドバイスを得ることができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者と同所属員や他大学研究者などの研究協力者による積極的な活動により、当初見込んでいた科学調査の段取りが順調に運ぶことができた。令和５年の年末、トカラ列島内の十島村を就航するフェリーの火災事故による欠航と、それに対する大隅群島内の三島村を就航のフェリーが代替運航する事態となり、それが長引くことでいずれの地域での調査行程に影響が及ぶこととなり、計画を変更せざるを得ない中でのことで有難いことであった。特に、奄美地域の世界自然遺産認定区域とそれ以外での活動制限などの、現地の情報収集に尽力して頂いた。このことは地域内との情報共有化においても、円滑に進める上で意義深いことである。
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| Strategy for Future Research Activity |
研究協力者との連携をさらに深めながら、現地の情報を収集し調査を進める予定である。特に今後は、徳之島と沖永良部島にて得られた試料について、放射性炭素年代測定をおこなうとともに、同堆積物中に含まれる植物珪酸体と炭化物の分析を進め、過去の植生変化についての実態解明に向けて推進する計画である。これにあたっては、植生環境の異なる鹿児島県内の他島や他村に位置する離島での比較調査も検討中である。いずれも、火入れ後の時間的経過や代償植生の違いを明らかにすることで、地域景観の形成史解明にもつながることが期待される。
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| Causes of Carryover |
本年度の現地調査は、鹿児島県内の甑島列島に位置する薩摩川内市の中甑島と下甑島、および奄美群島に位置する徳之島の徳之島町、天城町、伊仙町、沖永良部島にて、それぞれ1回ずつの調査であった。これは島嶼部という事情で、トカラ列島内の十島村を就航するフェリーの火災事故による欠航と、それに対する大隅群島内の三島村を就航のフェリーが代替運航する事態となり、当初計画していた調査地域を変更してのことであった。次年度は、これと同じ不測の事態は解消されるものと考え、少なくとも計画通りに進めることが見込める。
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