2022 Fiscal Year Research-status Report
島嶼域の氷期遺存植生をモデルとした温暖化による森林植生の維持・成立機構
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22K05727
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
久保 満佐子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (70535468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎尾 均 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, フェロー (20449325)
須貝 杏子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20801848)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 隠岐諸島 / 佐渡島 / 対馬諸島 / 樹木組成 / ヒメコマツ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本海島嶼の隠岐諸島は大陸と日本列島の間に位置し,氷期には本州本土の島根半島と陸続きになっていた。隠岐諸島には暖温帯林の中に冷温帯や亜高山帯に生育する種が混生する固有の森林植生がある。しかし,この固有の植生がどのような樹木組成を基盤として成立しているのかは不明である。 そこで隠岐諸島の樹木組成の特徴を明らかにするため,日本海にあり過去に九州および朝鮮半島と陸続きになった対馬諸島と,離島のままであった佐渡島の樹木組成と文献資料から比較した。その結果,面積が最も小さい隠岐諸島で種数が最も少なかった。南に位置する対馬諸島は広布種と南方種が多く,北に位置する佐渡島は北方種が多かった。中間に位置する隠岐諸島は両島との共通種が多く,佐渡島と同様に針葉樹が多いのが特徴であった。 隠岐諸島を代表する針葉樹の一つであるヒメコマツは,隠岐諸島の暖温帯で広く分布している。各個体の胸高直径,結実の有無,生育地の地形や群落の種組成を調べた結果,ヒメコマツの多くは岩尾根や崖,岩盤上に生育していた。胸高直径1 cmから70 cmの個体があり,直径2 cm高さ2 mの個体から結実していた。2 m未満の稚樹は岩盤に多く,大径木は森林の中でもみられた。稚樹が定着後に安定する場所では土壌が堆積して大径木に成長して森林の中で点在するが,撹乱を繰り返す場所では稚樹が更新して比較的小径の個体が生育していると考えられた。 隠岐諸島を代表する冷温帯樹種のミズナラについては,暖温帯に広く分布し,特に北西側に多いこと,本州のミズナラとは形態が異なることが観察された。そこで,隠岐諸島の中の標高や地域の違いでミズナラの特徴の違いを明らかにするため,葉と堅果を採集し,形態の多様性を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献資料の整理を行い,隠岐諸島と対馬諸島,佐渡島の日本海島嶼の樹木組成を明らかにした。隠岐諸島の島後島では,これまで確認されていないヒメコマツの大きな群落を発見し,島後島のヒメコマツ個体群の特性に関する調査を行うと共に,球果および種子の特性を調べている。また,隠岐諸島におけるミズナラの分布と形態を調べ,カツラについては個体群に関する調査地を選定し,遺伝的特性と共にカツラの分布調査に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
隠岐諸島と佐渡島,対馬諸島の樹木組成を比較した結果を公表する。ヒメコマツの群落で固定調査区を設置し,ヒメコマツ個体群の維持機構を明らかにする。ミズナラの葉と堅果の形態の多様性について結果をまとめる。カツラの分布と遺伝特性を調べ,雌雄の分布と受粉距離などの繁殖特性を明らかにする。スダジイとミズナラの分布を隠岐諸島の微気候と共に調べ,隠岐諸島における照葉樹林と冷温帯樹種の関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遺伝解析が次年度から開始になったため,次年度から利用する。また,佐渡島から隠岐諸島への出張が次年度以降になったため,次年度以降に利用する。
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Research Products
(2 results)