2022 Fiscal Year Research-status Report
酵素反応を考慮した土壌炭素分解モデル構築に向けて~酸化酵素活性の制御要因の探索~
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22K05734
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
森 大喜 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90749095)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 酸化酵素 / 窒素添加 / 土壌 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタ解析およびリン添加実験から「リン収奪仮説」の検証を行い、リン収奪仮説は窒素添加による酸化酵素活性の低下を統一的には説明できないことが明らかになり、これは酸化酵素活性制御機構理解の進展に貢献する。 リン収奪仮説が正しいとすれば、窒素添加によって酸化酵素活性は低下する一方、窒素とリンを同時に添加した場合には酸化酵素活性の低下は見られないはずである。リンと窒素を同時に添加した野外実験では、窒素による酸化酵素活性(ポリフェノールオキシダーゼ活性)の低下が見られなかったため、リン収奪仮説の検証ができなかった。これは、試験地のバックグラウンド窒素量が多かったことに起因すると考えられた。続いて野外試験結果を含むメタ解析を行ったところ、野外試験同様窒素による酸化酵素活性の低下が見られず、リン収奪仮説の検証ができなかった。これは、窒素とリンを同時に添加した試験の数が不十分であることに起因したと考えられた。そのため、窒素添加によって酸化酵素活性(ポリフェノールオキシダーゼ活性)が低下したサイトのデータのみを用いて再解析を行った。しかし、窒素に加えてリンを添加したものと窒素のみを添加したものの間に差は見られず、リン収奪仮説は支持されなかった。また、リン添加によってポリフェノールオキシダーゼ活性が低下したとする報告も存在した。以上の結果は、リン収奪仮説は窒素添加による酸化酵素活性の低下を統一的には説明できないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタ解析およびリン添加実験から「リン収奪仮説」について検証し、国際誌に発表することができた。土壌鉱物の金属触媒力の大きさを微生物由来の酵素活性から分離して独立に予測する手法については現在検討中であり、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
未だ未解明である「窒素添加によって酸化酵素活性が抑制される」現象を統一的に説明する可能性のある「リン収奪仮説」について、リン以外の養分についても同様に添加実験による検証を行う。すなわち「リン収奪仮説」をアップデートした「養分収奪仮説」の検証を行う。また、土壌鉱物の金属触媒力の大きさを微生物由来の酵素活性から分離して独立に予測する手法を開発する。さらに、養分添加によって土壌酵素のターンオーバーが促進される可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
当年度に予定していた土壌の化学分析について、翌年度に一括で行うことになったため。翌年度に採取した土壌と合わせて、土壌から抽出された元素について分析委託を行う。
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