2023 Fiscal Year Research-status Report
森林皆伐地はニホンジカにどれだけ餌資源を提供しているか?
Project/Area Number |
22K05735
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
酒井 敦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353696)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 裕史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60399780)
相川 拓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90343805)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ニホンジカ / カモシカ / 餌資源量 / 皆伐地 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで岩手県内の3か所の皆伐地で試験地を設定し、大型草食獣(シカ、カモシカ)の餌資源量調査をしていたが、昨年度の予定通りシカの生息密度が非常に高い釜石市に新しく試験地を設定し、他の試験地と同様の調査を実施した。2023年のシカ、カモシカの推定採食量は、シカの生息密度が多い順に、772 kg/ha、720 kg/ha、376 kg/ha、31 kg/haとなり、シカの生息密度が高いほど採食量が多い傾向がみられたが、調査地点のばらつきが大きく統計的には有意ではなかった。2022年の推定採食量と比較すると、シカの生息密度が中程度の2か所では、2023年の採食量が多くなり、最も生息密度が低い場所では逆に採食量が減少した。後者は植生が密になってきたため、かえって草食獣の利用がしにくくなった可能性が考えられた。 森林タイプや微地形によって大型草食獣の利用頻度(採食量)が異なるか調べるため、皆伐地とこれに隣接するスギ人工林、落葉広葉樹林において、半径1.7mの円形プロット(面積9㎡)を計46個(内訳:皆伐地22、スギ人工林11、落葉広葉樹林13)を様々な立地に設置し、プロット内の大型草食獣の食痕を植物種ごとにカウントした。皆伐地では平均36.0か所、スギ林では8.9か所、広葉樹林では7.7か所の食痕があり、皆伐地で有意に食痕数が多く集中的に利用されていることがわかった。また、地形では谷地形(平均51.9か所)が斜面(17.5)、尾根(4.3)よりも有意に食痕数が多かった。統計解析により、皆伐地は有意に食痕数が多く、尾根は食痕数が少ない傾向がある一方、斜面の傾斜角と林床植被率は食痕数に影響を与えていないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では3か所の試験地を予定していたが、これを1か所増やし、シカの生息密度に応じた皆伐地の餌資源量の推移傾向を示すことができた。また、当初の計画では予定していなかった、動物の食痕の多点調査によって、皆伐地が周囲よりも集中して利用されていることを明確に示すことに成功した。これらの調査結果は学会発表で速やかに公表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
岩手県内に設置した4つの試験地のうち2つは2年間の採食量データが収集できたことから終了することとした。残りの二つの試験地ではどちらもカラマツが植栽され下刈りが行われたため、2024年は下刈りが餌資源量にどのように影響するか調べる予定である。また植えられたカラマツがどのようにシカに被害を受けるかモニタリングをする。
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Causes of Carryover |
自動撮影カメラ画像の解析のための準備が間に合わず、画像読み取り作業の賃金として十分に支出できなかった。次年度はこれまで蓄積した画像の読み取り作業のため賃金として支出する。
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