2022 Fiscal Year Research-status Report
ユーカリの加水分解性タンニンの生合成機構とアルミニウム耐性における役割の解明
Project/Area Number |
22K05739
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山溝 千尋 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (20455314)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ストレス耐性 / 生合成経路 / 加水分解性タンニン / 二次代謝産物 / アルミニウム耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸性土壌では、主にアルミニウムが植物の生育を阻害する要因となる。強いアルミニウム耐性を示すユーカリの根では、加水分解性タンニンが多量に蓄積し、侵入してきたアルミニウムと結合して無毒化する。加水分解性タンニンは、植物に普遍的に存在するシキミ酸経路から分岐して合成されるが、草本モデル植物には蓄積せず、その代謝機構の解明は遅れている。 本研究では、本来加水分解性タンニンを蓄積しない草本モデル植物を活用して、代謝機構解明の加速化を目指した。これまでに、シキミ酸経路から分岐以降第一段階と第二段階のステップを担う酵素遺伝子がユーカリから単離されている。これらの遺伝子発現ベクターを構築し、ベンサミアナタバコ葉で一過的に過剰発現させた。過剰発現させたベンサミアナタバコ葉では、想定される中間代謝産物が合成されることを確認し、この系によって加水分解性タンニンの生合成に関与する遺伝子の探索が可能と判断した。一方、これらの遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナでは、中間代謝産物が検出されなかった。このことから、シロイヌナズナとベンサミアナタバコ葉では、異なる機構で加水分解性タンニンが蓄積されないと考えられた。今後、シロイヌナズナで加水分解性タンニンが蓄積しない原因を明らかにしていきたい。 また、第三段階以降のステップを担う酵素遺伝子を明らかにするために、トランスクリプトーム解析を行った。これまでに単離されている生合成酵素遺伝子との発現量の相関係数0.9を指標に、24の候補遺伝子を抽出し、発現ベクターを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シキミ酸経路から分岐以降、第一段階と第二段階の反応を担う酵素遺伝子を2遺伝子ずつ、これまでにユーカリから単離している。これら4遺伝子は、それぞれの発現量が高い正の相関を示すことがわかっている。第三段階以降の反応を担う酵素遺伝子を明らかにするため、当初の計画通り、トランスクリプトーム解析を行った。第三段階以降の酵素遺伝子も、既知の生合成遺伝子の発現量と高い正の相関があると考え、相関係数0.9を指標に24の候補遺伝子を抽出した。その中でも特に、6遺伝子が同じ遺伝子ファミリーに属しており、これらの遺伝子が、第三段階以降の反応を担う可能性が高いと考え、これらの候補遺伝子について、計画通り、発現ベクターを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した候補遺伝子の発現ベクターを、シキミ酸経路分岐以降第一段階と第二段階の反応を担う4遺伝子を連結した発現ベクターと同時に、ベンサミアナタバコ葉で一過的に過剰発現させる。ベンサミアナタバコ葉をLC-MS分析に供試し、候補遺伝子の過剰発現によって新たに合成された中間代謝産物を明らかにすることで、加水分解性タンニン生合成への関与を検証する。 第一段階と第二段階の反応を担う4遺伝子を導入したシロイヌナズナは、想定される中間代謝産物を蓄積しなかったことから、ベンサミアナタバコとは異なる機構で、加水分解性タンニンを蓄積しないと考えられた。様々な代謝産物を含む組換えシロイヌナズナを作出し、Al耐性における加水分解性タンニンの役割を明らかにするためには、シロイヌナズナで加水分解性タンニンが蓄積しない要因を明らかにする必要があると考えた。そこで、導入した第一段階と第二段階の反応を担う4遺伝子の発現量が高いラインを選抜し、トランスクリプトーム解析を行う。
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Causes of Carryover |
予算申請時は、コロナ禍によりオンライン開催が想定されていた国際学会が、次年度オンサイトで開催されることが決定した。燃料費の高騰や円安の影響があり、渡航費用が高額になるため、次年度に繰り越して、オンサイトで国際学会に参加する。
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