2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a model for evaluating bark moisture permeability in temperate deciduous trees
Project/Area Number |
22K05746
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松尾 奈緒子 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00423012)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 外樹皮 / 水蒸気交換 / 液相水浸透 / 表面粗度 / 皮目 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の外樹皮が樹幹内の水分蒸発防止機能と内樹皮や木部への水分供給機能をそれぞれどの程度持つのかを評価した研究は極めて少ない。本研究では、形態的特徴の異なる樹皮を持つ温帯落葉広葉樹2種の樹皮片を用いたチャンバー実験を行い、外樹皮面における水蒸気交換特性と液相水浸透特性を定量評価し、それらと樹皮の形態特性の関係を解明することを目的とする。2022年度は薄く平滑な外樹皮上に皮目を持つ温帯落葉広葉樹ブナを対象として実験を行った。さらにブナと厚く凹凸のある外樹皮を持つ熱帯落葉広葉樹チークを比較することで、外樹皮の形態が樹皮の水蒸気交換特性と液相水浸透特性に及ぼす影響を考察した。 樹皮片の吸脱湿実験の結果、外樹皮表面からの吸湿速度はブナの方がチークよりも大きく、脱湿速度は樹種間で大きな差がなかった。ブナにおいて皮目の多い樹皮片の方が皮目の無い樹皮片よりも吸湿・脱湿速度が大きかったことから、皮目が水蒸気交換速度に影響を及ぼすことが示唆された。 次に、樹皮片の蒸留水浸透実験の結果、外樹皮表面からの液相水浸透量はブナの方がチークよりも少なかった。また、ブナにおいて樹皮片の液相水浸透量・速度ともに皮目量と相関がないこと、チークにおいて樹皮片の液相水浸透量・速度ともに外樹皮剥離量と正の相関があることが示された。これらの結果は蒸留水浸透実験と同デザインで実施した染色水浸透実験の結果からも支持された。 以上の結果より、薄く平滑な外樹皮を持つブナにおいて皮目が外樹皮表面からの水蒸気の交換には関与するが液相水の浸透には関与しないこと、厚く凹凸のある外樹皮を持つチークにおいて外樹皮の剥離部分から液相水が浸透することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時は樹皮の形態の異なる温帯落葉広葉樹としてケヤキとミズナラを対象とする計画であったが、本研究の実験にはまとまったサイズの樹皮が必要となるため採取許可の申請が認められず、倒木直後の個体から樹皮を採取することができた同じく温帯落葉広葉樹のブナを対象とした。2022年度はブナと異なる形態の樹皮を持つ熱帯落葉広葉樹のチークを比較することで、研究を進めることにした。樹皮の形態特性と水蒸気交換・液相水浸透特性の関係を解明できれば、様々な樹種に適用可能なモデル構築という本課題の目的を達成できると考えられるため、樹種や生育環境・気候にはこだわらないこととした。このように対象樹種の変更はあったものの、実験計画としては当初の予定どおり順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、ブナとチークの樹皮片を用いた吸湿・脱湿実験と液相水浸透実験を行い、試料数を増やす。2022年度の実験において確認された、樹皮片の吸湿速度と脱湿速度の同一樹種内での違い(ヒステリシス)の原因を考察し、樹皮の水蒸気交換メカニズムを明らかにする。また、染色液浸透実験におけるタイムシリーズ画像の解析を行い、樹皮の液相水浸透経路を明らかにする。 樹皮の形態評価に関しては、2023年度から樹皮内部の組織構造の計測を開始する計画であったが、文献調査等に基づいて再検討し、2022年度に外樹皮表面の二次元・三次元形状の予備的計測を行った。その結果、実験に使用した1~2cm四方の樹皮片の場合、二測線の計測で面的な形態特性を評価可能であることが確認できた。したがって、この二測線計測による外樹皮表面の形態特性と吸湿・脱湿速度、液相水浸透量、液相水浸透速度の関係を明らかにする。これにより、水蒸気交換や液相水浸透の経路やメカニズムを考察する。
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Causes of Carryover |
2022年度は国際学会がオンライン開催であったため、海外旅費として計上した予算を使用しなかった。2023年度は国内・国際学会ともに対面開催が予想されるため、その旅費として使用する。
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