2022 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける森林の蒸発散特性の多様性を説明する統合理論の構築
Project/Area Number |
22K05752
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松本 一穂 琉球大学, 農学部, 准教授 (20528707)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 蒸発散 / 森林 / 東アジア / 統合理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では東アジアの亜寒帯から熱帯にかけて分布する様々な森林の蒸発散が立地環境(気候,土質)や林相(樹種構成,林齢)によってどのように特徴づけられるのかを解明する。さらに、得られた知見を基に、東アジア各地の様々な森林の蒸発散量を共通のパラメータで推定することを可能にする統合理論を構築する。 本研究で用いる予定のモデルには入力変数として環境因子と林分情報が必要になる。この内、土壌水分の指標としては植物の水分ストレスと関連づけることが可能な圧力水頭を用いることが妥当であると考えられる。しかし、体積含水率の観測は行われているものの、圧力水頭については観測されていないサイトも多い。また、葉面積指数についても、場所によって計測方法が異なり、相互比較が難しい状況にある。そのため、本研究では各サイトで圧力水頭と体積含水率の関係を調査し、両者の関係を示す水分特性曲線を得ることで、過去のデータに対しても体積含水率から圧力水頭を推定できるようにする。また、葉面積指数についても各サイトで全天空写真の撮影を行い、共通の基準で算出する。令和4年度はこれらの追加調査に必要な測定システムの準備を進めた。日本各地の蒸発散の観測サイトを管理する研究者とも連絡を取り合い、解析に用いる蒸発散量(潜熱フラックス)や各種気象データの利用の許諾を得た。代表者が管理している沖縄の亜熱帯林の観測拠点では、老朽化が進んでいた観測機器の一部を更新するとともに、これまでの観測データの整理を進めた。周辺植生の毎木調査も実施し、現在の植生状況について把握した。また、「森林水文学入門」(大槻恭一・久米朋宣・笠原玉青編)を分担執筆し、蒸発散に関するこれまでの基礎的知見を取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は新型コロナウィルスの感染が拡大していた状況にあり、代表者自身も新型コロナウィルスやインフルエンザウィルスに感染したため、当初予定していた各サイトでの土壌水分量や葉面積指数の追加観測は実施できなかった。そのため、令和4年度は主に代表者が管理している沖縄の亜熱帯林の観測拠点において、観測システムの更新とデータの整理を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は令和4年度に予定していた土壌水分特性曲線と葉面積指数の追加調査を北海道大学雨龍研究林と愛知県の定光寺自然休養林において実施する予定である。また、各サイトで観測された蒸発散量(潜熱フラックス)について、同一の基準に基づいて各種補正や異常値除去を行い、解析に用いるデータセットの整理を進める。
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