2022 Fiscal Year Research-status Report
紅藻スサビノリにおけるエチレン前駆物質による炭素・窒素代謝バランスの制御
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22K05779
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇治 利樹 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (00760597)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アマノリ / 植物ホルモン / C/Nバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水産重要種であるスサビノリを材料とし、植物ホルモンの1種であるエチレンの前駆物質、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)がどのような機構により、生体内の炭素と窒素のバランス(C/Nバランス)を制御し、生長、生殖、ストレス応答などをコントロールしているかを明らかにすることを目的としている。 昨年度は、ACC処理した糸状体における網羅的な遺伝子発現解析から、ACCで応答する遺伝子群を明らかとした。その結果、セリンプロテアーゼやメタロプロテアーゼといったタンパク質分解に関わる酵素遺伝子の発現や小胞輸送に関与する遺伝子の発現が顕著に増加する一方で、光合成関連遺伝子の発現が減少することが分かった。また、アミノ酸の中でも分岐鎖アミノ酸は、下流の異化産物をTCAサイクルに供給し、エネルギーを生成することが知られているが、これの分解に関わる分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体を構成する酵素遺伝子の発現が増加していた。そこで、糸状体でのACC処理時の遊離アミノ酸の変動を調べたところ、ACC処理に伴って、分岐鎖アミノ酸を含むいくつかのアミノ酸の含有量が減少することが分かった。以上のACC応答発現パターンは植物の老化時に見られる遺伝子発現パターンと類似しており、異化作用がACCによって促進され、窒素の再分配が引き起こされた可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海藻におけるACCの役割は不明な点が多いが、スサビノリ糸状体でのACCの役割として、老化に類似した生理応答を促進する可能性が明らかとなった。植物ではACCではなく、そこから生成されるエチレンが老化の植物ホルモンとして古くから知られているが、海産紅藻であるスサビノリでは、エチレンの前駆物質であるACCに老化様の促進作用がある可能性が分かり、植物ホルモンの進化を考える上で興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
ACC処理したスサビノリ葉状体と糸状体の藻体内のC/N比を測定するとともに、C/Nバランスを制御する遺伝子である、グルタミン合成酵素(GS)やグルタミン酸脱水素酵素(GDH)などの発現パターンを比較する。さらに、GSやGDHの遺伝子発現制御がどういったものなのかを、特にエピジェネティクスの観点から解析する予定である。また、植物では老化時で起きる現象は長時間の暗期培養時にも起きることが知られているため、スサビノリにおいてもこれに似た現象が起きるのかを確かめるために、糸状体を長時間暗期培養したときの遺伝子発現解析を行い、ACC処理時の遺伝子発現パターンと比較する予定である。
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