2022 Fiscal Year Research-status Report
休眠形質の種内変異から探る沿岸性カイアシ類の生活史進化
Project/Area Number |
22K05780
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西部 裕一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50403861)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 動物プランクトン / カイアシ類 / 生活史 / 休眠 / 沿岸域 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸性カイアシ類における休眠形質と生活史の種内地理的変異を明らかにすることを目的に、舞鶴湾(京都府)においてAcartia hudsonicaの個体群動態と休眠卵生産の季節変化を調査し、これまでに大槌湾(岩手県)から得られている結果と比較した。舞鶴湾では、A. hudsonicaは5月から6月にかけてプランクトン個体群が出現したが、7月上旬には水柱から消失した。その後、11月から再び出現し始め、2月から3月にかけて高い個体数密度を示した。また、雌1個体あたりの卵生産速度は2月に最大であった。雌の休眠卵生産は5月、6月および3月に確認され、プランクトン個体群が消失する直前の6月には実験に供した全ての雌が休眠卵を産み、産下した卵のうち99%は休眠卵であった。これらの結果から判断すると、舞鶴湾ではA. hudsonicaは冬から春までプランクトンとして出現し、夏から秋にかけては海底において卵で休眠する典型的な夏眠性の生活史を持つと考えられた。一方、大槌湾では、プランクトン個体群が周年出現するにも関わらず、春から初夏にかけて雌が休眠卵を生産することから、雌による休眠卵生産の適応的意義は両湾で異なっていると推測される。以上の野外調査および産卵実験に加え、舞鶴湾で採集したA. hudsonicaを実験室内で経代飼育することに成功した。大槌湾の個体については既に経代飼育が確立しているため、今後、共通環境条件に対する休眠形質の応答性を個体群間で比較することが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
舞鶴湾での野外調査と飼育実験を計画通りに実施し、対象とする動物プランクトンの個体群動態と休眠卵生産の季節変化の概要を明らかにできたため。また、実験室内での経代飼育が確立できたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、舞鶴湾での野外調査と飼育実験を実施する。また、実験室内で経代飼育した個体を用いて、共通環境条件に対する休眠形質の応答性を個体群間で比較する。
|
Causes of Carryover |
当初計画で導入予定であった大型機器(冷凍機付きインキュベーター)は所属機関に既設のものが使用可能となったため、購入を見送った。繰越金については、次年度実施予定の舞鶴湾での野外調査の旅費と物品費、室内飼育実験の物品費として使用予定である。
|