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2022 Fiscal Year Research-status Report

海産無脊椎動物の「エラ」から探る共生イプシロンプロテオバクテリアの単離と機能解明

Research Project

Project/Area Number 22K05782
Research InstitutionMie University

Principal Investigator

田中 礼士  三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80447862)

Project Period (FY) 2022-04-01 – 2025-03-31
Keywordsイプシロンプロテオバクテリア / アルコバクター / 共生細菌 / エラ / 海産無脊椎動物
Outline of Annual Research Achievements

近年、海産無脊椎動物からイプシロンプロテオバクテリアの単離例が多数報告されており、本研究室でも海産無脊椎動物のうち、巻貝であるメガイアワビからの単離に成功している。さらに、数種のメタゲノム解析法により、アワビの消化管とエラにイプシロンプロテオバクテリアが介在していることを明らかにしている。しかし、その多くが未培養であり、これらイプシロンプロテオバクテリアと宿主との関係性についてはよくわかっていない。これらの解決には、既存の発想にとらわれない新たな培養法が必要であると考えられている。そこで、本年度では従来手法を改良し、トコブシ、メガイアワビ、クロアワビにおけるイプシロンプロテオバクテリアの単離を試みた。
分離手法を多種検討したところ、トコブシから2株、メガイアワビから10株、クロアワビから2株の計14株のイプシロンプロテオバクテリアの単離に成功した。16S rRNA遺伝子の前半塩基配列を決定し、近縁種との相同性を確認したのち、分子系統解析によりそれぞれの系統的位置を検討したところ、8株はArcobacter marinusと高い相同性を示し、残りの6株は既存種と97 %以上の相同性を示さなかった。これら6株は、すべて15 ℃で培養したものであり、Arcobacter生育の最適温度とされている30 ℃とは大きく差があることから、培養温度の変更が未培養Arcobacterの単離に効果的であると考えられた。
今後はこれら分離株のうち、性状の異なる株についてゲノム解析を敢行し、宿主である海産無脊動物との関係性を見出す遺伝子群の捜索を行う予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は海産無脊椎動物のエラ付随物より、従来手法を改良し、イプシロンプロテオバクテリアの単離を試みた。手法としてはNuria Salas-Massoら(2016)の方法に改良を加えた。消化管とエラをそれぞれ切り出し、それをArcobacter brothにC.A.T. Selective Supplementを添加した培地に加え、一次培養(15 ℃と25 ℃)を行った。一次培養液を適度な口径サイズのフィルターを載せた平板培地(Marine broth)に滴下し、透過液の二次培養(一次培養と同じ温度)を行った。
本手法は明らかにこれまで得られなかった分離株の取得に寄与した。Arcobacterの特徴である透明~白色のコロニーを単離し、DNA抽出後、Arcobacterに特異的に結合するプライマー(ARC94)を用いて特異検出後、16S rRNA遺伝子の前半塩基配列を決定し、近縁種との相同性を確認したのち、分子系統解析によりそれぞれの系統的位置の確認をしたところトコブシから2株、メガイアワビから10株、クロアワビから2株の計14株Arcobacterの単離に成功した。そのうち、8株はArcobacter marinusと高い相同性を示し、残りの6株は既存種と97 %以上の相同性を示さなかった。
以上のことから、研究目的としてのイプシロンプロテオバクテリアの網羅的分離の初期段階をクリアできたものと考えている。

Strategy for Future Research Activity

今年度においてある程度の数の新規分離株を得ることに成功した。今後はこれら分離株のうち、性状の異なる株についてゲノム解析を敢行し、宿主である海産無脊動物との関係性を見出す遺伝子群の捜索を行う予定である。具体的には、単離に成功したイプシロンプロテオバクテリア綱細菌及び、既存の本属細菌のゲノム情報を比較検討し、海産無脊椎動物に生息する種の特異的な遺伝子を明らかにする。上記で得られた分離株より、シーケンス用ライブラリを作成後、HiSeq 2500システムを用いて塩基配列を決定し、得られたリードからEdenaによるアッセンブル行程を行う予定である。その後RASTサーバーを用いて、得られたドラフトゲノムの塩基配列のアノテーションを行う。イプシロンプロテオバクテリア綱の特徴であるsoxシステムやsqr遺伝子といった硫黄酸化関連遺伝子群や、海洋由来イプシロンプロテオバクテリア綱細菌に特徴的な窒素固定をコードするnifや硝酸還元をコードするnapシステムなどの遺伝子を明らかにし、代謝マップを作成する。これら窒素固定から派生するアミノ酸代謝・発酵関連遺伝子群の捜索も併せて行う。最終的には作成した海産無脊椎動物由来のイプシロンプロテオバクテリア綱細菌の代謝マップを基に、既存種を含めたεプロテオバクテリア綱細菌との比較ゲノムを行う。特に炭素の固定能力の有無や、エネルギー源として利用する物質の特定、代謝産物の推定を行う。また、代表的なヘリコバクター病原遺伝子(cagAなど)の有無を確認する作業を行い、これまでに報告されている陸由来の病原性イプシロンプロテオバクテリア綱細菌との遺伝学的な差を明らかにする。

Causes of Carryover

(理由)想定よりも多くの表現形質を有するイプシロンプロテオバクテリアの分離に成功し、分離実験の回数を減らすことができたため。
(使用計画)予定数以上のゲノム解析を行うための核酸抽出試薬類、ディスポーザブル器具類の購入および解析費用として使用する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 海産二枚貝のエラに存在する海洋性スピロヘータの検出および遺伝的多様性解析2023

    • Author(s)
      川原峻・水谷雪乃・田中礼士
    • Organizer
      日本水産学会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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